『歯を大切にすることは健康長寿への近道』

年をとつても健康で質の高い暮らしを するために大切なこと!

年をとっても健康で質の高い暮らしをしたい、元気で活動的に生活をしたい、そう思っている人は多いことでしょう。それを実現するためには、実は「歯」がとても重要な役割を果たすことをご存じでしょうか。

調査によると、食事を「とてもおいしい」「おいしい」と感じている人は、平均で約20本の歯が残っていたそうです。一方で、「おいしくない」と感じている人の平均は約11本です。健康で質の高い暮らしに「おいしい」という感覚は大切です。

その感覚は「残っている歯の数」によって大きく左右されるのです。ほかにも、「かみ合う歯が多い人ほど脚力やからだのバランスをとる能力が高い」「運動機能が高い人ほど歯の数や咀咽できる食品数が多い」という調査結果もあります。

「歯」は、質の高い暮らしや健康長寿に大きくかかわっているのです.

 

歯が残つている高齢者は認知症になりにくい!

人生100年時代といわれるいま、認知症を発症せずに、できるだけ自立した生活を送りたいものです。実は、歯を大切にすることは、認知症を予防することにもつながるといわれています。

米国の修道女を対象とした「ナン・スタディ」と呼ばれる認知症研究があります。同じような環境下で長年暮らす修道女たちに協力を得て、彼女たちの老化を多角的に調査したものです。それによると、残っている歯の数が「0~9歯」の人は、「10~28歯」の人より、アルツハイマー型認知症の発症リスクが2.2倍も高かったそうです。また、老いたマウスに迷路を記憶させる実験で、抜歯したマウスと抜歯しないマウスを比べた場合、明らかに抜歯したマウスの記憶力が低下したそうです。

つまり、「歯が残っているかどうか」が認知症や脳の機能に影響するのです。

歯やお口の状態次第で、入院期間や死亡リスクが変わる!

歯やお口の中の環境に気を配り、きちんと口腔機能の管理・ケアをしているかどうかで、病気をしたときの人院期間や死亡リスクにも差が出てきます。

心臓やがんなどの手術、抗がん剤治療などの際に、お口の中の環境をきちんと管理していたケースとそうでないケースとでは、人院期間(在院日数)に大きな差が出たという調査結果があります。これは、お口の中の環境が悪化すると、お口の中で増殖した細菌によって、合併症を引き起こしやすくなるからと考えられています。

また、ある高齢者施設では、入所者のうち、残っている歯が20本以上の人に比べて、0本(義歯もなし)の人の死亡率が1.8倍も高かったそうです

こうした調査結果は世界にも数多く、いずれも歯が残っている、つまり歯やお口の中の環境に気を配っている人のほうが、余命が長くなっています。

運動や社会参加と同じくらい食事やお口のケアは重要!

超高齢社会を迎えた日本で、今後ますますキーワードとなる言葉があります。それが「フレイル」です。「フレイル」とは、高齢になって、心身の機能や活力が衰え、虚弱となった状態のことをいいます。「健康」と「要介護」の間といえばいいでしょうか。フレイルに早く気づき、治療や予防をすることで、要介護に進行することを防ぐと考えられています。

フレイルを予防するために大切といわれる三つの柱があります。「身体活動」「社会参加」「栄養」です。からだを動かしたり(身体活動)、人と交わったりする(社会参加)ことと同じくらい、「栄養」は大切です。この「栄養」は、単に「バランスよく食べる」だけではありません。かむ力やのみ込む力など、口腔機能も含まれます。

適切なお口の管理・ケアをして、口腔機能の低下を防ぐことも重要なのです。

 

お口の機能低下は全身の機能が低下するサイン

高齢になると、かめない食品が増えたりするなど、お口の機能が低下していきます。この状態を「お口」の「フレイル」で、「オーラルフレイル」といいます。

オーラルフレイルになると怖いのが、負の連鎖です。かめなくなると、食べられる食品の数が減ります。すると、さらにかむ力が落ちてしまいます。この結果、口腔機能が低下し、低栄養やサルコペニア(筋力低下)のリスクが高まります。

オーラルフレイルは、からだのフレイルに先がけて、始まります。調査によると、オーラルフレイルと認定された人は、そうではない人と比べると、24ヵ月後にはからだのフレイル、サルコペニアともに2倍以上の発生率でした。45ヵ月後の要介護認定、死亡の発生率も2倍を超えていました。

オーラルフレイルは、全身の機能が低下するサインともいえるのです。

 

自分の歯を失っても、義歯や インプラントで健康寿命は延びる!

残っている歯が多いこと、かむ力のあることが、要介護を予防し、健康寿命を延ばすことに影響するとおわかりいただけたでしょうか。だからといって、「歯を失ったら終わり」ではありません。自分の歯はほとんどなくても、義歯を使用している人は、義歯を未使用の人に比べて認知症を発症する割合が低く、20歯以上自分の歯が残っている人とほぼ同様との調査結果があります。また、義歯を使用すると、転倒のリスクが少なくなることもわかってきています。

たとえ自分の歯を失っても、人れ歯やインプラントなどの義歯で歯を補えば、お口の機能は回復します。

歯を補う方法の中でも、特にインプラントはかむ力が強く、「第二の永久歯」ともいわれます。インプラントでお口の機能を回復することは、要介護を予防し、健康寿命を延ばすことに大きく貢献する可能性があるのです。