お口の都市伝説~歯みがきこれ本当!?~

歯みがきは毎食後に3分が正しいんじゃなかったの?

いまの中高年世代か子ども時代に身に着けた歯みがき習慣、それを広めたのが333運動ですよね。

「3度の食後、3分以内に3分間歯をみがきましよう」と、わかりやすい標語で食後の歯みがき習慣を日本に定着させた画期的な歯科保健運動でした。

起床時に洗顔と歯みがきをし、食後や寝る前の歯みがき習慣がなかった昔の日本人。近年の333運動の甲斐あって、いまや日本は朝晩歯みがきする人が7割以上という、世界に冠たる歯みがき大国です。食後みがきもすっかり定着していますね。

おかけで、我が国の歯科保健はさらなる高みを目指し、歯みがきの効果と効率を進化させる段階に入っているんです。食ベカスというよりプラーク(細菌の塊で、学術的には口腔バイオフィルムともいいます)を歯みがきでこすり落とすのだということ。プラークは放っておくと成熟して取れにくくなってしまうから必ず1日に1度歯ブラシ+フロスまたは歯間ブラシですみずみまでしっかり除去しよう。フッ素(フッ化物)入りの歯みがき剤をタップリ使おう。これが歯みがきの基本と考えられるようになってきました。

現在歯みがきは、患者さんの歯の状態や生活リズムに合わせたカスタマイズ型へと進化しています。歯みがきタイムは、忙しい朝とゆっくりできる就寝前では取れる時間が違うでしようし、歯並びがよく手入れが楽な人と歯がデコボコしている人では、当然ながら歯みがきにかかる時間は異なりますよね。ところで、「すぐに歯みがきをしないほうがいい」という説ですが、これは中高年になって歯ぐきが下がり歯の根が出てきたら、スッパイものを食べて軟らかくなった歯の根を食後すぐに歯ブラシでこすらないほうがよいというおすすめです。ですからこんな心配のないかたでしたら、食後すぐに歯みがきしていただいて、ちっとも問題ないんですよ。ことほど左様に、ピッタリの歯みがき法は十人十色。「よくみがいている」と「よくみがけている」とは違うので、ぜひプロに教わりましよう。歯医者さんや歯科衛生士さんが、あなたに合う方法を教えてくれますよ。

歯みがきかたって流行があるのね。

中高年のかたかしら。若いかただったら、毛先を歯の根元に当てて細かく動かす「スクラビング法」を、歯医者さんや学校で教わって育ってきているはずですもの。おっしゃるとおり、以前は「歯ぐきにブラシを当て、ローリング法といってホウキで掃くようにクルンクルンと歯ブラシを回転させる方法でみがきましよう」つて教えてました。

ええ、私自身もすご~く熱心にしてました。歯ブラシは硬めをおすすめしていましたし、今とはぜんぜん違いますね。でもね、むし歯や歯周病について今ほど解明されていなかったこのころ、これが最前線の歯みがき法だったんです。その後、歯科学の成果が少しずつ積み上がり、むし歯や歯周病の原因はほぼ解明されました。「こうすれば予防できるじやないか」とわかってからは、それまでの予防情報が大きく更新されました。もちろん歯みがき法もです。

歯ブラシの品質アップも素晴らしくてね。日本のメーカーさんってすごいでしよ? 軟らかくて歯ぐきにやさしく、でも汚れはしっかり取れる。こんな歯ブラシなら、歯ぐきの近くをスクラブしても歯ぐきが傷つきません。

当時、スクラビング法が推奨されていなかったのは、そのころの歯ブラシでは歯ぐきが痛くてできなかったせいもあるでしょう。サイエンスって、どんどん進歩していきますよね。・IPS細胞だって、10年前には想像もしなかった。それと同じように歯科のサイエンスもどんどん進歩しています。歯みがき情報も、より効果のあるものへと更新されているんですよ。

患者さんに早くお伝えしたくて、私たちも啓発キャンペーンや口腔保健指導を頑張っていますが、患者さんご自身も、クリーニングがてら歯科情報をケットしに、定期的に歯科医院においでください。知らずに損しちやわないように。ぜひお願いしますね。

歯ブラシ1本あれば歯周病を予防できる。

「歯ブラシ1本で歯周病を予防できる」だなんて、日本に蔓延している「歯ブラシ万能神話」には困ったものです。歯周病の原因であるプラークやバイオフィルムが、歯と歯のあいだ(隣接面)や歯と歯ぐきの境目の溝(歯肉溝)にできると、歯ブラシはなかなか届かず、取るのが難しいのです。それに衛生学では「予防の成功には3種のヶアが必要」とされているんです。ひとつはセルフケア。2つ目がパブリックヘルスケア(自治体の歯科健診や公衆衛生活動)。3つ目が歯科医院で受けるプロフェッショナルケアです。

ところが日本では、多くの人がセルフケアさえ頑張れば大丈夫だと誤解している。しかも歯ブラシー本で予防できると。これには私たちは猛省しなくちゃなりません。予防指導が「歯ブラシ指導に偏っていないか?」とね。北米人の歯みがき時間は日本の半分ぐらいですが、高齢になって抜かずに残っている歯は後期高齢者で、日本より多いようです。これはプロフェツショナルケアが十分にされているからです。まずセルフケアですが、隣接面も掃除しないと、半分近い面積にプラークが溜まったままです。日本ではフロスや歯間ブラシを便う習慣が拡がりません。指導しても「面倒だ」ってね。日本人はきれい好きだっていいますが、プラーク1mgには10億もの細菌がウヨウヨですよ。これを溜めていて平気とはね。

パブリックヘルスケアでは、歯科健診がタダでも、実際に受ける人はごく少数。歯周病は痛まずに進みます。健診を受け見逃さないことです

もっとも重要なのがプロフェッショナルケア。歯周病の原因となる歯肉溝のプラークは、歯ブラシではまず取れないので、歯科医院でていねいに取ってもらうこと、これが必須なんです。ふだんからフロスや歯間ブラシも使うこと、健診を受け、半年に一度は歯科医院で歯ぐきのなかをきれいにしてもらうこと。この3つを続ければ、歯周病の予防はきっと成功します。すぐにもはじめましよう

歯ブラシは硬い毛のほうがしっかりみがける。

このかたのおっしやること、乱暴なようでいて、じつは一面正しいです。広い歯面のプラークを効率よく取るには、軟毛やテーパード毛ではたしかに不利。まどろっこしいと感じるのは、無理もありません。ただ、硬い歯ブラシでゴシゴシすると、歯ぐきが痩せエナメル質より一段やわらかい象牙質が出て、これを削ってしまわないか心配です。理想的な歯ブラシ圧は150~200g。台所用のハカリなどで試すと案外軽いタッチですよ。それに硬い歯ブラシは、歯と歯のあいだや歯と歯ぐきのさかい目の掃除がしにくいでしょう? このへんはとくにむし歯や歯周病のリスクが高いところ。ツルツルした歯面はもともとプラークが溜まりにくく、むし歯のリスクの低い場所なのに対し、歯と歯のあいだや歯と歯ぐきとのさかい目は歯ブラシが届きにくくプラークも溜まりやすいのです。歯ブラシを選ぶなら、ここのお掃除に少しでも有利なものがおすすめなんですよ。

それでは、どんな硬さの歯ブラシがいいのか? 歯科衛生士さんによる実験結果をお教えしましょう。5社のさまざまなタイプの歯ブラシ26本を比較した結果、いちばん歯と歯のあいだをきれいにできたのは、フラットタイプのミディアムソフトでした。同タイプ内で比較すると、全体的にソフトやハードよりミディアム(あるいはミディアムソフト)の毛質がプラークの除去に有利という結果でした。

ただし、歯ブラシで歯と歯のあいだがどの程度きれいになったと思います? ショックをうけないでくださいね。優秀な歯ブラシでも約6割のプラーク除去率にとどまりました。頬側と舌側の両面から15秒間みがいた結果がこれです。

ですから歯周病で血が出るなどの問題がないなら、できればミディアムの毛質でみがき、フロスか歯間ブラシもぜひ使ってください。この場合、歯科衛生士さんに選んでもらうのがいちばん。もちろんフッ素(フッ化物)配合歯みがき剤も忘れずに。

歯みがき後は、水で何度もうがいさせます。

お子さんのむし歯予防にフッ素(フッ化物)入りの歯みがき剤を使って、素晴らしいと思います。ただ残念なのが「うがい」の仕方なんです。フッ素を使ってむし歯予防の効果を上げるには、ちょっとしたコツがあります。

それは、歯みがき後にフッ素を口のなかに長く留めること。そのため、うがいはできれば「最低限」にしてほしいんです。歯みがき剤をたっぷりと歯ブラシにとって歯みがきをしたら、10~15mlくらい(少ないでしょう?)の水で、軽くクチュッとして吐き出します。すると、フッ素が口のなかにそこにしっかり残ります。2時間ほど飲食せずに過ごすと、残ったフツ素のイオンが大活躍。歯の表面を酸に溶けにくく強化したり、歯みがきで取り残したプラークのなかに浸透してむし歯菌の活動を抑えてくれるのです。

とくに就寝前はその後飲食しませんし、寝ているあいた唾液が減ってフツ素イオンが流されにくいのでチヤンスなんです。歯みがきをいくらていねいにしても、プラークを100%除去するなんてできませんよね? だったら残ったプラークのなかにフツ素イオンを送り込んで、予防に使っちやおうというわけです。とってもいい方法でしょ?手間要らずで、もちろん大人にも効果があります。

今の歯みがき剤は、薬剤の効果がバッチリ発揮されて、さすが「医薬部外品」です。単なる清涼剤とは違うんですよ。歯みがき剤を買うときには「医薬部外品と書いてあるかな?」と見てくださいね。そうそう、成分表示の「フッ化○○」、「フッ素」配合の確認もお忘れなく。ただし、さすがのフッ素も歯みがきをサボつてコテコテに熟成したプラークのなかには入り込めません。歯みがきをふだんしていて、でも取り残しちやった、というようなフレツシュなプラークによく浸透します。それから、「やっぱりうがいをよくしないとスッキリしない」というかたは、うがいのあとにフッ素洗口をしたり、シェルやフォームでフッ素を補うといいですよ。

研磨剤が歯を削ってしまうから歯磨き粉は使わないほうか良い?

おやおや。歯みがき剤をお使いであいとは残念ですね。私は「タップリと使用してくださいね」といつも患者さんにお話しいていますね。

「昔はカラみがきしなさいって言われましたけど」と心配するかたもなかにはおられますが、「昔と比べてビックリするほど歯みがき剤の品質がよくなっています。大丈夫、安心してくださいね」ってお伝えしています。

たしかに今と比べて昔の歯みがき粉はタバコのヤニ取りという感じでサラサラでした。盛大に泡が立ち、しかも辛かったでしょう? ろくにみがいていないのに、口いっぱいの泡と刺激にごまかされて、はやばやと歯みがきを終えてしまうこともあったと思うんです。その頃の最先端のサイエンスと技術力を駆使した製品だったとは思うのですが……。そんな事情から当時「カラみがき」を薦めた先生は、患者さん思いの素敵な先生だったと思いますよ。

一方、今の研磨剤は粒子が細かくて、軟らか。なかには歯の表面についた汚れを浮かせて剥がしやすくする製品もあります。より少ない研磨剤で汚れが取れるように研究されているんですね。そのうえ、今の歯みがき剤には、予防に役立つ機能も加えられています。たとえば、日本で販売されている約9割がフッ素(フッ化物)配合。むし歯予防にとても効果があります。タップリ使って歯と歯の間などすみずみまでフッ素を届けていただきたいです。

じっくり歯みがきしやすいように、発泡が控えめ、味はマイルドになっていますし、ザラザラ感も少ないので、なるべく少量の水でクチュッとゆすぐ程度にできれば、働きもののフッ素イオンがお口のなかに残ります。何度もゆすいで捨ててしまうなんて、もったいないですものね。

最後に、歯みがき剤をトコトン有効活用する裏技をひとつ。歯みがき後、うがいせずツバをペツと出し、そのままフロスや歯呵ブラシをするんです。歯と歯のあいだや歯の根元に、フロスや歯間ブラシが歯みがき剤をしっかり届けてくれますよ。

歯ぐきがブヨブヨで歯が動く感じ。それで、歯周病用の歯磨き剤を買ったの。これで自分で治せるわ、よかったァ!

殺菌剤の入った歯周病予防の歯磨き剤、歯科医院でもよく歯周病の患者さんにおすすめしていますよ。ただし、歯周病で歯ぐきが腫れて歯が動くほどになっている人が、治療に行かず、家庭で殺菌剤入りの歯みがき剤を使うだけじゃ、歯周病の根本的な改善は難しいです、残念ながらね。

歯周病になると、歯ぐきに炎症が起きて、さらに進むと歯槽骨という歯を支えている骨が溶けて失われる。その結果、歯と歯ぐきとの間の溝、つまり、歯周ポケットが深くなっていくんだ。

たとえば中等度の歯周病の歯周ポケットともなると、なんと深さは6ミリほど。そのなかには歯石が溜まり、空気が苦手な歯周病菌は歯石や歯周ポケットの奥を棲家にしてヌクヌクと隠れ、増え続けているんだから。

大きな問題は二つまず歯ブラシの先が深くなった歯周ポケットの奥までしっかり届いて隈なく歯周病菌や汚れをかき出せるのか? という問題。もうひとつは、歯周病菌の巣である硬くこびりついた歯石を歯ブラシで取り除けるのか? ということ。

いくら殺菌剤が入った優れた歯みがき剤でも、歯周病菌までダイレクトに届かなければ効果は限られてしまうでしよ。殺菌剤入りの歯みがき剤を使ってよく歯みがきをすること自体は大事なことだけど、一方で歯周ポケットのなかの歯周病菌を温存して、結果的に培養し続けていては歯周病は治らないよ。

だから、まずは歯科医院のプロの技術で、歯周ポケットのなかを掃除して歯石ごとプラークを徹底的に取り除くことが大事なんだ。大もとの原因を取り去ったうえで殺菌剤の入った歯みがき剤で歯みがきをすれば、浅くなった歯周ポケットや唾液のなかに残って浮遊する歯周病菌もやっつけられて歯周病予防にとても効果がある。

歯がグラグラするほど進行した歯周病なら、すぐにでも治療をはじめないと歯を失ってしまうよ。まず、歯石を取って、それと並行してそのすぐれた歯みがき剤を使ってください。手遅れにならないうちにね。

歯みがき?仕事でそんな時間はないよ。だからデンタルリンスの殺菌力でむし歯予防。できるビジネスマンは清潔でなきゃ。

う~ん。たしかに、デンタルリンスは殺菌成分入りの製品が多いです。ですから、むし歯予防に一定の効果はありますよ。でも「うがいだけで十分か」というと、話が違ってきます。なにしろ、むし歯菌の巣であるプラークは歯にベタベタと引っ付いてますからね。口のなかには、膨大な数の細菌がいます。それが集まって作る巣がプラーク。これを放置すると、バイオフィルムという丈夫な膜ができ、ヌクヌクと守られてむし歯菌はどんどん増殖します。膜のなかに排泄物である酸をたっぷり出して、歯を溶かしてしまうわけです。

殺菌成分配合のデンタルリンスですすぐと、口のなかにフワフワ漂っている細菌を殺す効果はあります。しかも、ミントなどの香味でスッキリ感もあって気持ちがいい。でも、だからといって「歯みがきは必要ない」なんて思っちやいけません。

デンタルリンスに、歯にへびりついたプラークやしつこいバイオフィルムには太刀打ちできないんです。プラークやバイオフィルムっていうのは、排水溝につくネバネバ汚れの親戚です。想像してみてください。排水溝の汚れを取るには、こすり取るか、あるいはかなり強力な洗剤を使いますよね?デンタルリンスの殺菌成分は、人が安全に使える範囲の成分です。口に排水溝用の洗剤を流し込んだら、それこそ粘膜はズル剥け。たいへんなことになっちやいます。

ですから、プラークやバイオフィルムに棲むむし歯菌をデンタルリンスで根こそぎやっつけることは、現状では無理かあるわけです。となると、プラークを落とすのにいちばん効果のある方法はやっぱり歯みがきです。歯についた汚れを確実に落とすことができます。歯ブラシが届かないところは、フロスやタフトブラシも使いたいところです。

が、忙しいビジネスマンではたいへんですかねえ。とにかく最低でも1日1回はしっかりとお口の汚れをおとしましょう。

日常的に「うがい」しかしていないのなら、口のなかはもしかして、あまり悠像したくはありませんが……すでに、排水溝のなかみたいになっているのでは?! 歯みがきもしましょう!

入れ歯はむし歯にならないからみがかなくても大丈夫。

入れ歯は、プラスチックや金属でできていますから、たしかにむし歯になりません。しかし、使っているうちにプラークも歯石も忖きます。この点は歯と変わりないんです。ですから、「入れ歯も毎日みがく必要がある」んですよ。

 きれいにみがかないと、細菌が猛烈に繁殖します。汚れた入れ歯の細菌を誤嘸したら肺炎の原因になりますし、だいいち口臭の原因になります。

入れ歯みがきのコツは、流水下で、入れ歯用のブラシや軟らかい歯ブラシで優しく洗うこと。プラークを取り除くには、ブラシで落とすのかいちばん効率がいいんです。

ただしこのとき、歯みがき剤を使いゴシゴシこするのはやめてください。入れ歯に傷が付き、プラークが付きやすくなってしまいます。歯みがき剤は使わずに、優しく洗います。なにか付けて洗いたいのなら、石鹸や入れ歯専用の歯磨き粉がいいです。ただしよく洗い流してください。

歯と同じで、入れ歯みがきも、できれば一日2回お願いします。昼間と、夜寝る前とね。そして夜は洗浄剤に浸ければ、スッキリした入れ歯で気持ちよく寝られます。

部分入れ歯のかたは、入れ歯を外して、自分の歯をみがくときにみがきましょう。入れ歯にプラークが付いたままでは、入れ歯をひっかけている隣の歯まで悪くなってしまう。それでは抜歯となり、入れ歯が作り直しになりますからね。

ところで、ジョージーワシントンが入れ歯だったってご存知ですか?博物館に飾られている彼の入れ歯には、人工歯でなく人間の歯が埋め込まれていて、その歯がむし歯になっています。つまり「ジョージーワシントンは、入れ歯の手入れをしていなかった」。しょっちゅう入れ歯を作り直していたらしいです。

お気に入りの入れ歯を長持ちさせるには、半年に一度くらい歯科医院で調整をしてもらうといいでしょう。使っているうちに人工歯が減ったり、土手の形も変化してきますから、総入れ歯になっても歯科医院をお忘れなく。

フッ素でインプラントが腐食するので歯磨き剤はNG?!

チタンがフッ素(フッ化物)に触れると腐食するって、よくご存知ですね。

インプラント治療に使われるチタン。とても優れた金属材料なんですよ。インプラント治療はこれなしには成立しません。というのもチタンは不思議なことに、骨と結合する性質があるんです。からだはふつう、異物が入ってくると排除しようとしますよね? でもチタンは、あごの骨に埋め込んでも排除されずに、むしろガッチリと骨と結合して自立してくれるんです。この性質のおかげでインプラント治療が可能になっています。埋入後も腐食しにくくアレルギーも少ない、とても優れた材料です。

ところが弱点があって、チタンはフッ素に触れると腐食してしまうんです。現在売られている歯みがき剤にはたいていフッ素が入っていますから、ご心配なのでしようね。インプラントが錆びて折れたりしたらたいへんですもの。

でも、安心してください。フッ素でどれほど腐食するのかについては研究者が調べたデータがあります。日本で歯みがき剤に配合できるフッ素濃度は1500ppm以下と決められていて、これを使用したときに口のなかに残るフッ素はごく微量で低濃度。まったく腐食しないわけではないけれど、日常的に使用しても問題はないということなんです。とくにチタンの人工歯根の部分については、あごの骨に埋入されていてフツ素に直接触れる機会は限定的でしようし、そういう点からみても、影響は少ないと考えられています。フッ素を使わず、残った歯のむし歯予防が十分でないと、新たな治療が必要になったり、将来的にはまたインプラントが必要になってしまうかもしれません。

あれやこれやを天秤にかけ総合的に考えると、フッ素入りの歯みがきは大事です。ぜひ毎日お使いくださいね。ただし、歯科医院の「フツ素塗布」では、フツ素の濃度が高いため、酸性の塗布剤については使用を控えるように配慮をしています。

歯の色が濃いのが気になる私。で毎日砂消しゴムみたいな美白器具でゴシゴシ。なんか、前より前歯が黄色っぽく見える気が・・・・。

輝くく白い歯、魅力的で憧れますよね。白い歯は笑顔をいちだんとさわやかに見せますし、溌剌とした印象を与えます。日本人も近頃は口を大きく開けて笑うのがあたりまえになりました。歯の印象は、たしかに重要になってきていると思います。

まず前歯がしみる、ということですが、どうやら、歯の表面のエナメル質が削れて薄くなったのではないでしようか。歯の表面にあるエナメル質の下には、象牙質というエナメル質よりも黄色っぽくて軟らかい歯質があるんです。象牙質は神経に近いため、刺激が伝わるとチリッとしみます。とくに若い方の歯は神経が大きく敏感で、刺激が伝わりやすいため、知覚過敏は出やすいんです。また歯の色についてですが、エナメル質が薄くなると、当分一その下の象牙質の色がより透けて見えるようになります。つまりこすりすぎは、かえって歯の色を濃くしてしまうんですよ。ゴシゴシこすってきれいになるのは、歯の表面に付いたステイン汚れだけで、歯の色自体が変わるわけではありません。

もとの色よりも白い歯をお望みなら、歯科医院のホワイトニング(漂白)をおすすめします。これなら、エナメル質を減らさずにしみます。

 歯は、唾液の力で自然に再石灰化しますが、大きくすり滅ってしまったエナメル質まで元に戻すことはできません。ステイン除去効果のある歯みがき剤を使ってごくふつうに歯みがきをし、歯のくすみを取り除く程度なら、歯をすサ減らしてしまう心配はありません。研磨力の高いもので繰り返し集中的にこすったりすると、歯はすり減っていきまで。エナメル質、が減ってしまうと、その分むし歯になリやすくなりますし、いざホワイトニングするときもしみやすいなど、歯の健康と美容に不利な条件がむしろ増えてしまうんです。

口もとをきれいにしたいなら、まずはエナメル質を犬切に。歯を削らずにきれいにできる方法について一度歯医者さんに相談してみるといいですよ。