患者さんのためのインプラントQ&A Part3

歯を失ったら、歯肉と顎の骨にはいったい何か 起こるのでしょうか?

抜歯直後には抜歯窩(歯があった所の空洞)に血餅が形成されます。その後の数週間で抜歯窩壁からやってくる細胞と血管が骨を作り、抜歯窩を修復します。同時に歯肉の細胞が血餅の上を伸びて歯肉が新生し、抜歯窩が閉鎖します。残念なことに、抜歯窩の骨も軟組織も治癒とともにボリュームを失います。組織の喪失の程度は、個々の病変の広がりや抜歯中の組織損傷を含む多くの原因に依存します。

抜歯後に起こる組織の喪失を防ぐことはできますか?

抜歯後の組織の喪失は、抜歯時に起こる骨や軟組織への損傷をできるかぎり小さくし、抜歯時に骨を除去しないことで最小限にすることが可能です。さらに組織の喪失や減少を最小限にするためには、抜歯直後に抜歯窩に骨移植材料を填入することもあります。

失った骨を回復することはできますか?

失った骨はさまざまな方法で回復が可能です。これには自家骨(自分自身の骨)の使用も含まれます。二次的な合併症が起こるリスクがありますが、骨を回復する部位とは別の部位から骨採取を行います。他にもいくつかの骨移植材料(骨補填材料)が用いられています。

移植部位においては、すべての骨移植材料が、顎の骨から生じる新生骨と一体化することが必要です。自家骨は、自分由来の骨の細胞と骨基質による生物学的活性をもっています。喪失した骨の程度、骨が欠損した部位ならびにその上部を覆っている軟組織の状態によって選択材料や術式が決定されます。

上顎洞底挙上術が必要だといわれました。これって何?

上顎洞底挙上術とは、上顎洞の下壁を底上げする手術方法です。これにより、上顎の骨と上顎洞粘膜との間に移植材料を設置するスペースを作ることができます。大臼歯や小臼歯の抜歯後には骨の高さが足りなくなるため、上顎洞底挙上術がしばしば必要となります。インプラント埋入前に、骨の高さの回復を行います。骨の高さの喪失が少ない場合には、インプラントを埋入する際のドリリングの穴から上顎洞底挙上術を行うことができます。一方、骨の高さの喪失が広範囲の場合には、上顎洞の側面からアプローチする必要がありますが、これにより上顎洞粘膜を安全に挙上することができます。上顎洞底挙上術と同時にインプラントを埋入する場合もあります。

 

 

上顎洞底挙上術の代わりの治療はありますか?

上顎洞底挙上術を行わない代替治療として、上顎洞粘膜下に残存する骨に短いインプラント(ショートインプラント)を埋入する方法があります。もう一つの選択肢としては、上顎洞粘膜に干渉しないように、三角形の骨領域に角度のついたインプラントを埋入する方法があります。以上のような術式がありますが、咬合のことインプラントの予後も考え上顎洞挙上術を行うことが多くあります。

糖尿病でもインプラント治療は できますか?

可能です。糖尿病はインプラント治療の禁忌症ではありません。しかし、インプラント治療開始前には、糖尿病がよくコントロールされていることが必要です。加えて、術後の感染リスクを避けるため抗生剤の処方が必要となります。インプラントの治癒期間(インプラントが埋入されてから修復物が装着されるまでの期間)を延長することもあります。

骨粗鬆症でビスフォスフォネート製剤を服用しています。インプラント治療はできますか?

飲むタイプ(経口)のビスフォスフォネート製剤を使用している場合であれば、たいていはインプラント治療が可能です。国際コンセンサス会議では、インプラント治療前に経ロビスフォスフォネート製剤の服用を中止する必要はないだろうと結論付けています。しかし注射のビスフォスフォネート製剤を使用している場合には、いかなる口腔内の手術も絶対的禁忌となります。

抗凝固療法を行っているのですが、インプラント治療はできますか?

抗凝固療法は、インプラント手術を含む簡単な口腔内の手術では一般的には禁忌症とはなりません。骨や軟組織の移植を含む負担の大きな手術は十分な説明後に行います。抗凝固療法の一次的な休止や変更については、術前に内科医の同意が必要となります。

妊娠していますが、インプラント治療はできますか?

インプラント手術がきわめて単純で合併症がないとしても、妊娠中の手術は推奨されません。また、抗生剤や抗炎症薬の処方が必要な場合には、投薬による合併症を起こす可能性があります。妊娠中のインプラント手術は避けることがベターです。

循環器疾患があるのですが、インプラント治療はできますか?

きわめてまれですが、循環器疾患のいくつかは絶対的禁忌症となります。たとえば、心臓発作後6ヵ月以内はインプラント埋入ができません。さらに循環器系のいかなる病態に対しても、循環器専門医の許可を得てインプラント埋入を行う必要があります。

骨粗鬆症ですが、インプラント治療はできますか?

可能です。骨粗耘症はインプラント治療の禁忌にはなりません。複数の科学的根拠のある研究によれば、骨粗毀症の患者とそうでない患者の間にはインプラントの成績に違いがないことが示されています。しかし骨粗耘症の治療にはビスフォスフォネート製剤の使用が多く、これはインプラント治療を行う際には注意があります。

80歳以上でもインプラント治療はできますか?

可能です。 80歳以上でもインプラントは禁忌ではありません。多くの場合、80歳以上でもインプラントの失敗が増えることはありません。手術の禁忌症となる病気がなければ、インプラント治療を受けることができます。

10歳代です。歯が折れてしまったのですが、インプラント治療はできますか?

インプラント治療は、顔面の成長が完全に終了したのちに行って下さい。(通常20前後)もし歯科医師が早すぎる時期にインプラントを埋入してしまった場合、顔面の成長が完了した時には見た目に問題が起こる可能性があります。インプラント埋入が行える適正な時期までは、もっとち効果的な暫間的治療方法を歯科医師が提供してくれます。