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歯磨きは食後30分以内か?以降か?

歯磨きは食後30分以内か?以降か?歯磨きののタイミングで問題について

近年「食後30分以内に歯磨きをすると歯を傷つけてしまう」という報道がメディアを賑わしています。

 これは、食事によって糖分や炭酸を摂取した後は、特に口内が酸性に傾き、その状態で歯磨きをすると、歯のエナメル質が溶けやすくなってしまうというもの。歯の腐食を防ぐには、酸にさらされたエナメル質が唾液によって再び硬さを取り戻すまで、少なくとも食後30分経ってから歯磨きをするのが望ましいとのこと。

 日本小児歯科学会が見解を発表しています。「人のロの中では、食べた後に口の中が酸性になったとしても、唾液には酸を中和する働きがあり、酸性飲料の頻繁な摂取がない限りすぐには歯が溶けないように防御機能が働いている。つまり、日本の一般的な食事では食後すぐの歯磨きにより歯が溶けることはありえない。反対に食後に歯磨きをしないままでいると、すぐに歯垢中の細菌によって糖分が分解され、産生された酸によって歯が溶けはじめる。」とのこと、結果として、食後は早めに歯磨きをして、歯垢とその中の細菌を取り除くことが重要だということです。

 日本歯科保存学会も、「これまで通り食後の早い時間での歯磨きを続けてもらいたい」と発表していましたが、「酸性の強い飲料などを摂取した場合には、酸蝕に留意した歯磨きを推奨する」と改めています。

 要するに、むし歯予防には食後すぐ、酸蝕症の予防のためには、食後30分経ってからの歯磨きが良いということだと思います。酸の強い飲料といえば、炭酸飲料はもちろん、スポーツ飲料、食酢ドリンクなど色々ありますので注意が必要です。

現在、食後の歯磨き開始時間に関しての弊害は少なく、その事よりも1日3回しっかりと歯ブラシと糸ようじ(デンタルフロス)や歯間ブラシ等を併用しながら、プラークコントロールすることが大切かと思います。

歯の健康は月1度の歯ブラシ交換から

☆歯ブラシ交換のサインを見逃さないで!

ハブラシの交換時期って知っていますか?自分では「まだまだ使える!」なんて思っていても、ハブラシはちゃんと取替えサインを出しているのですよ。さぁ、あなたのハブラシを後ろから見てみましょう。毛先がヘッドの台座よりはみ出して見えるなら、それが取替えのサインです。 交換の目安は1日3回のブラッシングで約1ヶ月。月に一度はハブラシ交換!ハブラシの取替えサインを見逃さないで。

☆開いた歯ブラシを使うと・・・

毛先の広がったハブラシではせっかく丹念にブラッシングしても、みがいているようでみがけていないばかりか、ハグキが退縮してしまい、露出した歯の根元からムシ歯になることも。また、1ヶ月も経たないうちに毛先が開いてしまうようなら、ブラッシングに力を入れすぎです。ゴシゴシするのではなく、一本一本の歯とハグキにハブラシをあてて、ほどよい力加減で細かくていねいに。 一生使う大切な歯。でもそれを支えるハグキはもっと大切です。大事な歯は、新しいハブラシと正しいブラッシングで守りましょう!

 

☆こんなに汚い歯ブラシ?!

歯科医が行った化学実験で、3週間使用した歯ブラシには100万個以上の細菌が付着していることがわかった。これはバケツ9杯分の汚水に匹敵する細菌数であり、便器の水に含まれる細菌数の実に80倍にのぼるレベル。歯など口腔内に残った細菌は食べ物と一緒に体内に入り込むわけで、つまりバケツ9 杯分の汚水を飲むのと同じことになるという。口の中に傷でもあれば、病気にも感染しやすくなる。

歯ブラシを浴室など雑菌が繁殖しやすい湿度の高い場所に放置せず、乾燥した場所に置くべきです。1日3回歯を磨く人なら月に1回は歯ブラシを新しいものに交換しましょう。また、口腔内に炎症がある場合などは最低でも3~4週間に1回は交換し、風邪を引いた場合なども完治後に新しい歯ブラシに交換したほうが良いと思います。

ブラッシングは、どのくらいの時間行うと良い?

お口の状況によって時間もブラッシング方法も変える必要があります!

答えは1つではありません。たとえば、重度歯周病の患者さんと、乳幼児の保護者たちとでは、まったく異なることがおわかりいただけると思います。

28本の歯を、少しずつずらしながら2本ずつていねいに磨いていくとして、2歯面を30秒ずつ磨けば14分になりますが、10分以上というのは長いですよね。

歯周病の患者さんに対しては、マッサージの効果も期待して、歯磨剤を使わない「ながらブラッシング」をおすすめしています。唾液は飲み込んで構いません。バイオフィルムを1日1回完全に除去できれば、次に初期定着菌が定着するのに1日程度の時間がかかりますが、これらの菌は病原性の低い善玉菌ですので問題にはならないのです。

むし歯に対しては、フッ化物配合歯磨剤を使用したブラッシングをオススメします。フッ化物配合歯磨剤では、少なくとも30秒から180秒の間は、ブラッシング時間が長くなるほど口腔内のフッ化物量が増加することと、その後1時間程度、フッ化物濃度の高い状態が維持されることが確認されています。

ですから、う蝕リスクに対しては、「3分間の歯磨きに追加して、歯間ブラシやデンタルフロスを利用しましょう」というのが一般的な指導内容といえます。

 

ブラッシングによる歯肉マッサージの効果は?

ブラッシングには、歯肉を物理的に刺激するマッサージ作用も期待されると言われています。実際、歯周病の予防や治療に、どの程度の効果や意義があるのでしょうか?

物理的刺激による歯周ポケットの傷の修復、炎症の軽減が期待されます。

歯肉マッサージが歯周局所にどのように影響するのかについては、動物実験でいくつか確認されています。

まず、歯肉の外縁上皮が直接歯ブラシで刺激され角化か亢進することで、細菌が外縁上皮の表層を通過しにくい状態になります。細菌に対する防御機能が充進すると考えでよいでしょう。

次に、歯肉の外側からの刺激で、接合上皮細胞や結合組織中の線維芽細胞が間接的に物理的刺激を受ける結果、これらの細胞の増殖活性が高まることが確認されています。歯周病患者の歯周ポケット内では、内縁上皮が破壊され、傷や潰瘍ができています。歯肉マッサージによって内縁上皮の細胞や線維芽細胞が増殖し、その傷が修復されると期待できるのです。また、酸素飽

和度や血流量が高まり、炎症が軽減することは、動物のみならずヒトを使った実験でも確認されています。

臨床研究でも、物理的刺激の弱いデンタルフロスよりも、歯間ブラシを使った場合の方が、歯周炎の軽減が著しいと報告されています。刺激によって歯周組織が“強くなったと考えられます。

ブラッシングでは歯肉マッサージをしながら同時に、プラークを除去します。そのため、マッサージ効果とプラーク除去効果についてそれぞれを独立で評価するのは難しいです。とはいえ、どちらの効果もブラッシングの重要な役割です。ブラッシングでは、「細菌の除去」がとかく注目されやすいのですが、「マッサージ効果」も忘れずに覚えておいてください。

食後30分以内のブラッシングは止めるべき?

「メディアで、食後すぐの歯磨きは歯の健康によくないので30分空けたほうがよいと言われていますが、学校給食後の歯磨きは止めたほうがよいですか?」という質問を受けました。どう答えればよいでしょうか?

学校全体で昼食後のブラッシングを中止する必要はありません。

学校現場で「食後30分以内に歯を磨かない」ことを推奨する必要はありません。このようなことが話題になっている理由は、「酸性食品」の摂取後にブラッシングすると歯がすり減ってしまう「酸蝕症」の危険性が高まる可能性のあることが、欧米を中心に報告されているからです。マスコミなどで報道された際に、「酸性食品」がいつの間にか「食事」にすり替わっていると推測されます。実際、2011年にイギリスで出版された酸蝕症の教科書「Dental Erosion」では「一般に、食後すぐに歯を磨くべきである」と注意されています。また、酸性食品摂取直後のブラッシングと酸蝕症との関連についても報告が少なく、「関連があった」とする報告と「なかった」とする報告があります。

さらに、日本では、欧米に比べてきわめて学齢期の酸蝕症が少なく、中高生で1.1%という報告があります。また、酸蝕症の原因が食後すぐのブラッシングであるかどうかは不明です。今後、日本における酸蝕症の有病率や酸蝕症に関連する要因を明らかにするための調査研究が望まれます。

現段階では、酸蝕症が疑われる児童生徒に対しては、個別の対応をすぺきと思われます。酸蝕症が疑われる児童生徒には、逆流性食道炎、酸性食品摂取、ブラッシング習慣などとの関連を検討し、それぞれ指導を行うことが推奨されます。既出の酸蝕症の教科書にも同様の記載があります。したがって、学校全体で昼食後のブラッシングを中止する必要はありません。

 

ヨーグルト磨きの効果はある?

現状では、ヨーグルト磨きによるう蝕や歯周病の予防効果は認められていません。

昨今、乳酸菌に代表される、健康に有益な作用を及ぼす生きた細菌を体内に取り込むことで、体内環境を整える「プロバイオティクス」という考え方が広がってきています。この患者さんも、そうした意味でヨーグルトを使ったブラッシングを実践しているのかもしれません。

プロバイオティクスは、歯科界においても注目され、う蝕や歯周病の予防や治療が考えられて、研究が始まりました。しかし、今まで行われてきたプロバイオティクスを用いたう蝕や歯周病に関する数多くの臨床研究においては、予防や治療の成果はまちまちです。

たとえば、ある一定期間において、プロバイオティクスによって口腔内におけるう蝕関連細菌数や歯周病原性細菌数が減少したり、歯周病の炎症指数やプラーク指数が減少したという報告は認められました。しかし、プロバイオティクスのう蝕や歯周病のリスクに関連する細菌やさまざまな指標に対する効果についての報告をまとめたシステマティックレビューでは、そのエビデンスの質はすべての項目において「非常に低い」という結果が示されています。

プロバイオティクスによるう蝕や歯周病の予防の可能性は期待されるものの、現状ではエビデンスが不十分であり、その効果については今後の検証を待たねばなりません。ですから、ヨーグルトを使ったブラッシングにう蝕や歯周病の予防効果があるとは、今のところは言えません。

重曹磨きの効果はある?

プラーク除去効果や歯肉炎改善効果が報告されています。

重曹は、本来、調理や洗濯などで使用される炭酸水素ナトリウムですが、歯磨剤として使用する人もいるようです。実は、昔から口腔衛生の手段として使用されてきた歴史があります。

効果については、重曹含有歯磨剤でプラークの付着を予防できたという報告や、高濃度重曹含有歯磨剤で歯肉炎を改善できたという報告があります。

その作用機序についてはいまだ確立されていませんが、Ghassemiらは、いくつかの機序を推測しています。重曹の結晶が他の清掃剤(研磨剤)より大きいためプラークの除去に有効であること、重曹が口腔内で溶解してプラークの多糖の粘性を低下させたり、カルシウムイオンと結合して細菌間の結合を緩くしたりすることによってプラークの除去を容易にすることなどの可能性を述べています。

また、重曹含有歯磨剤による歯のホワイトニング効果も報告されていますが、重曹の持つ研磨効果についてはさまざまな報告があり、今後のエビデンスの集積が期待されます。

ちなみに、米国歯科医師会は、有効成分として重曹のみを含有した歯磨剤を認可しておらず、認可しているのは、ごく少量の重曹を含有したフッ化物配合歯磨剤です。一方、日本においては、重曹の配合上限やフッ化物との共存に制限はないようです。

ブラッシングができていれば、むし歯にならない?

ブラッシングさえすればう蝕を防げるというわけではありません。

う蝕は、う蝕菌が糖質から産生する酸により歯質が脱灰する疾患です。理論的には、もし、歯口清掃により口腔内にう蝕菌が存在しない状態を常時保つことができれば、う蝕は発生しないということになります。しかし、口腔内には歯の深い溝など、歯ブラシの毛先が到達しにくい部分があり、日常のブラッシングでプラークを100%除去することはかなり困難です。実際、ブラッシングによるプラーク除去率は、歯磨剤の使用の有無にかかわらず約50%であると報告されています。

砂糖摂取がう蝕に与える影響は、ブラッシングをすることで若干弱まってもけっしてなくならないことが、いくつかの研究でわかっています。チョコレートなどの甘いものを1日1回以上食べる子どものう蝕になる確率は、ブラッシングの回数が1日2回と1日2回の子どもではほぼ同じでした。また、成人を対象とした研究では、ブラッシングの回数とは独立して、砂糖摂取量

の増加とともにう蝕も増加するという関係が認められると報告されています。

う蝕予防には、細菌、歯質、食物の3つの要因それぞれに応じた予防法を組み合わせて行うことが重要です。患者さんには、ていねいなブラッシングに加えて、フッ化物配合歯磨剤の使用、う蝕を誘発しにくい代用甘味料の利用定期的な歯科医院での専門的歯面清掃の必要性についてアドバイスをうけてください。