喫煙

禁煙後.健康な歯肉を取り戻すまでどのくらいかかる?

喫煙習慣のある歯周病の患者さんに禁煙を勧めたところ、「タバコをやめると、どれくらいで元の健康な歯ぐきに戻るのですか?」と聞かれました。目安はどのくらいでしょうか?

約1年後には、歯肉の形態が正常な状態に近づきます。

禁煙開始から数週間すると歯肉出血が起こりやすくなります。しかしこれは、喫煙によって抑制されていた炎症反応(防御反応)が正常に起こるようになったことが原因です。体が正常な反応をしているのですから、心配は要りません

そもそも、喫煙が歯周病のリスク因子であることは多くの研究で認められています。タバコ成分の影響で、歯肉血管の障害免疫機能の低下歯周ポケット内での嫌気性菌の増殖などが起こるため歯周病が進みます。数年間喫煙すると、歯肉の表面は粕薬を塗ったような光沢を放ち、線維性に肥厚して硬くなります。しかし、ブラッシング時に出血がほとんどないため、気づかないうちに重症化することが多いのです。

禁煙約1年後には、このように肥厚していた線維性の歯肉の形態がより正常に近づき、歯周病は安定した状態になります。ぼとんどの患者さんでアタッチメントロスは停止するか、または劇的に緩やかになります。また、禁煙によって歯周病の治療効果が高まることもわかっています。

歯周病の改善に禁煙は大前提となります。禁煙で歯肉が必ず回復することを伝え、禁煙の決意を後押ししましょう。そして、喫煙により低下した免疫系を回復できるわけではないものの、日々でいねいに清掃を行うことで口腔細菌による攻撃を和らげられることも忘れずに伝えてください。

禁煙後にできた口内炎への対応は?

ニコチンパッチを使って禁煙を始めた方から、禁煙後に口内炎ができたという相談を受けました。どのように対応すればよいでしょうか?

ニコチンパッチの副作用ではないことを伝え、禁煙の継続を促しましょう。

習慣的に喫煙している人の体内には、つねに一定量の二コチンが存在します。タバコをやめると二コチンが身体から徐々に抜け、タバコによりダメージを受けていた組織や機能が正常に回復していきます。その過程で現れるさまざまな症状を禁煙離脱症状(タバコの禁断症状)といいます。

禁煙後に出現する口内炎(口腔潰瘍)も、この離脱症状のーつであると考えられています。ニコチンパッチを使用したことによる副作用ではありません。禁煙を開始した大のうち約40%に発症するといわれており、ほとんどの場合、禁煙を始めて2週間以内に現れます。

なぜ禁煙後に口内炎ができやすくなるのかはよくわかっていませんが、仮説としては、タバコ成分による口腔粘膜上皮の角化や抗菌作用が潰瘍形成に抑制的にはたらいている、禁煙後のストレスにより免疫反応が低下する、などが報告されています。

重症化する症例は少なく、多くは1ヵ月以内に治癒します。口内炎は痛みをともなうため、喫煙再開のきっかけとなりやすいですが、このような説明を行い、引き続きニコチンパッチを使用して、禁煙を継続してもらうようアドバイスをしてください。