歯科治療を知る

歯科の麻酔注射は思ったよりも痛くありません

歯科の注射は他科に比べてとても難しいとされています。たとえば腕に注射をする場合、腕の皮膚には余裕があって、つまむとよく伸びます。しかし、歯肉は腕の皮膚と違って余裕がないのでふくらむことが難しいです。そのために圧迫感か強く、液漏れがしやすいのです。そこで、歯科では特別に極細の注射針を使い、できるだけ少しずつ入るようにして、痛みを軽減させています。さらに針の刺入時の痛みをなくすために、表面麻酔剤を塗布するなどの配慮をしています。また、みしま歯科医院では薬液の注入速度をコントロールできる電動注射器を使用しています。

注射器が顔の近くに来るので、どうしても恐怖感はありますが、以降の治療が痛みを軽減させますので、怖がらずにがんばってください。緊張すると思わず呼吸を止めてしまい、知覚に対して集中しがちですが、呼吸を犬きくゆっくりとすると多少は楽になります。

<歯ぐきへの注射>

通常の治療では歯ぐきに注射をすることで知覚を麻庫させます。

<歯根膜への注射>

激しい痛みを発している神経を取り除く歯根の治療などで、麻酔が効きにくいときに行います。

奥歯は前歯よりもたいせつ?

前歯がきれいに並んでいれば、奥歯はどうでもよいかというと、そんなことはありません。奥歯は食べ物を細かくつぶす役割があります。つぶされずに飲み込むと胃への負担も大きくなります。

また、奥歯を治さずに前歯だけ治療を行つでも、しばらくすると今度は前歯も崩壊します。奥歯があごの位置(咬合高径)を決めており、本来はお口を結んだときは奥歯が当たり、前歯は紙1枚程度のすきまがあります。奥歯がなく前歯が強く当たりすぎていると負担が大きくなり、前歯は次第に動き出します。咬合高径(高さ)が低いと、顎関節に痛みが出て、咀嚼する筋群にも痛みやこり、さらに肩こりなどが生じることがあります。

前歯を先に、というお気持ちはわかりますが、お口全体の治療をする場合は、奥歯の治療を優先してから、前歯の治療をしたほうがよいと思います。

美容整形や矯正歯科では、鼻から顎にかけての線(Eライン)をとても重視しています。横顔の美しさも歯並びが大いに関係しているわけです。

あごが疲れる食いしばり

歯が対側の歯と接触する時間は、食事のときだけです。それも食べ物が介在して咀贈している時間がほとんどで、実際には1日あたりせいぜい7分程度しか接触していないといわれています。普段は、唇が付いて、口を閉じていても、歯は接触していない状態です。つより噛んではいないのです。

まれに、仕事をしているときに歯が接触して、噛みしめ(食いしばり)ている人がいます。パソコンワークに多くみられますが、無意識に行っているために自覚はありません。また、夜間睡眠時の歯ぎしりも同じで、人に指摘されなければわかりません。

歯ぎしりや噛みしめは、歯や歯槽骨、顎関節、さらに周囲の頭頚部の筋肉へ痛みとして症状が発現しますので、歯科医に相談してください。

無意識下での行動なので、完全治癒は難しいのですが、咬み合わせの負担を軽減させる方法はあります。

痛くなくても抜いたほうがよい親知らず

あまり歯を抜かないで、極力歯を残して、元にもどすことが基本的な歯科治療の原則です。しかし、親知らず(智歯といいます)は、生えてくるときや一番奥なために不潔になりやすく、歯肉炎が生じて痛みを伴うことが多々みられます。その中でも、一部口の中に露出するか、ほとんど見えない状態で痛みの出ないケースもあります。

下顎の親知らずが前方の歯に接触していると、その部位にむし歯を誘発することがあります。むし歯は歯根のやわらかい部分になりやすいのです。痛みが出ずに徐々に進行し、痛くなったときにはすでにむし歯が深く進行していて、最悪の場合、2本とも抜歯になることがあります。このようなケースは、親知らずの萌出年齢万ある18~24歳以降の方にみられます。

そうならないためにも、受診時にエックス線写真を撮影し、疑いがある場合は、痛くなくても親知らずを4本とも抜いたほうかよいこともあります。

小さいむし歯なのに治療したら大きな詰め物になった

これは、歯の組織解剖学的構造によるためです。エナメル質や象牙質の構造が関係しています。とくに、象牙質内部では組織がやわらかいので、むし歯はエナメル質との境目から広がります。

近年では、小さなむし歯の場合は、詰め物の材料(レンジ)と接着剤の発達により、エナメル質が多く残せるようになりました。そのため、詰め物は従来よりも小さくて済みますが、適用限界があります。

大きなむし歯になると、型取りによる金属を用いた処置(インレー)となるために、詰め物はどうしても大きくなってしまいます。

見た目の穴(エナメル質のむし歯)は小さくでも、象牙質の中ではむし歯が大きく広かっていることがあります。できるだけ早めの治療が必要です。

神経は取ったほうがよいのですか?

むし歯で痛くなった歯を治療するときに歯の神経を取るといいますが、これは正確な表現ではありません。神経と呼ばれるものは正しくは歯髄といい、歯の象牙質口栄養分を補給している組織です。むし歯などで歯髄まで穴が開くと細菌が入り感染して炎症が起きます。その後、組織が壊れて痛みを発するので除去します。

歯髄を取ってしまった歯は、栄養補給か受けられないために時間の経過とともにもろくなり黒く変色します。歯は噛む力に耐え切れないために欠けたり折れたりしてしまうので、そのために銀歯(クラウン)でくるんで、噛む力に耐えるようにしているのです。

むし歯を取った穴が大きくても、歯髄を残せる可能性があるかもしれないといかれたら、残してもらうよう試みてください。

もし痛みが出た場合は、残念ですがむし歯が進行していたとあきらめてください。歯髄を残せる可能性があれば、歯科医は何とかして残したいと考えており、患者さんに痛い思いを体験させようとは決して思っていません。

☆神経を取られた歯

神経を取ったあとは根管充填材を詰めで密封しますが、栄養補給を絶たれた歯はもろく、やがて変色するようになります。

しみるのは知覚過敏?

歯が鋭く一過性にしみる症状にみられるのが知覚過敏です。一過性とは冷たい水を含んだときに、一時的に感じるのであり、かつその痛みばすぐに消失し、いつまでも痛みが続かないことをいいます。エナメル質が傷つしたり、はがれることで、内部の象牙質が露出すると、刺激を神経に伝えることで起きます。何らかの原因により神経が過敏になった状態をいいます。

よくみられる原因としては、

①歯ぐきが退縮し、象牙質が露出してしまった場合

②噛みしめや過度なブラッシングなどで、象牙質が露出してしまった場合

③エナメル質に亀裂ができて、象牙質に伝わる場合

④むし歯ができて、象牙質に達した場合

などが考えられます。

なお、むし歯の場合もありますので、知覚過敏と思って宣伝しているハミガキペーストでブラッシングしているだけでなく、一度相談してください

☆むし歯の警戒信号かも

むし歯が原因で知覚過敏を発症する場合、その痛みが神経(歯髄)からの警戒信号だと思って、早めの治療を求めていると理解してください。

歯の破折はきびしい

転倒や顔をぶつけることでケガをすると、歯の破折がよくみられます。破折は歯のどこの部分まで行ったかによって、処置が変わります。そのためには、必ずエックス線写真で見えない部分までも確認してから処置をします。

①歯の一部分:神経まで破折が達していない場合は、レジンという充填物で修復することができます。大きな衝撃を受けている場合、冷たい水にしみるなどの症状が出ることがあります。

②神経が出る:破折により神経が出ていると鋭い痛みを感じます。そして炎症が起きると、そのままふたをすることはできない場合が多いので、ほとんどは神経の除去が必要です。その後はクラウンにより形を修復します。

③骨を含めた中まで破折した:抜歯の適応がほとんどです。ぶつけて歯が抜けそうになった場合は、そのまま来院してください。脱落してしまった場合は、牛乳に浸して乾燥しないようにしてお持ちください。条件がよければ再植を試みることができます。

1歯欠損による治療の選択 (下顎第一大臼歯の場合)

①ブリッジ:両隣在歯のエナメル質を削り、金属冠で被覆する際に橋の部分にダミーとして人工歯を付けます。隣在歯に金属による修復がされている場合は、歯質の損失はさほど変わらないでしょう。ブリッジで一体化することで隣在歯に咬み合わせの力による多少の負担がかかりますが、噛みにくさや違和感はさほどありません。隣在歯が健全歯の場合は削るリスクがあります。保険(金属冠)と自費(白いセラミックス)があります。

②インプラント:インプラントを手術により顎骨に埋め込み、骨と結合させ、その上に上部構造を装着します。ブリッジや入れ歯と比較して天然歯により近い機能回復が得られます。保険の適応はなく自費になります。近年、術式や材料が確立され、長期にわたり使用することができるようになりました。

③部分床義歯:自分で取り外す部分入れ歯です。クラスプという金属線で隣在歯を固定して装着します。隣在歯はガイドを付与するために少し削りますが、ブリッジほどは削りませんので、むし歯になるほどでありません。ただし、入れ歯は咀嚼時に動きますので、多少気にはなると思います。

保険の差し歯や入れ歯は何年もつのか

わが国においても、これまでいくつかの疫学調査が報告されています。何年もつかは、その人の食生活や定期検診の受診次第で差がつきます。歯を支える歯固組織や咬み合わせは年齢ととともに日々変化します。こうした変化に対応するためにも定期的なメインテナンスは欠かせません。

札幌市内の歯科医院で調査しか例を紹介します。調査は1991年から2005年まで6499歯を調べたもので、3年、5年、10年の生存率をまとめたものです。10年以上もつ人もいますが、詰め物は5年程度銀歯は8年程度と考えておいたほうかよいでしょう。入れ歯は適合が悪くなると破損したり、うよく噛めなくなりますから、5年程度で修理するか、残っている歯に問題が生じるなどの状況によっては、新規作製も考える必要があると思います。

定期的なメインテナンスで、早めの対策をとれば、さらに大きな修復物にならなくても済みます。歯をなくさないためにも、治療が終わっでも歯科医院の管理を受けるようにしましょう。

入れ歯は何回で入りますか?

入れ歯の製作期間について説明します。一般的に入れ歯ぱ型を取ればすぐにできる、というものではありません。とくに残っている歯がむし歯になっていたり、動きが大きく噛むと痛いなどの歯がなければ、製作に入れるでしょう。

入れ歯を製作する際のステップについて説明します。

1回目:検査、簡単な型取り。これで石膏模型をつくり、入れ歯の形などを考えます。

2回目:精密な型取り、対合する歯の型取り

3回目:咬み合わせの記録(この工程が大変重要なため数回行うこともあります)

4回目:人工歯の並びの確認(ろう義歯;ワックス)、最終的な精密な型取り

5回目:完成

6回目:調整(1~3日後)

7回目:調整(1~2週間後)

8回目:調整(1か月後) (この調整は患者さんによって異なります。)

*これはあくまで一例です。

咬み合わせの記録:咬合採得とも呼ばれ,上あごと下あごとの垂直的な位置と水平的な位置を決定します

治療してもまたかかります

残念ながら、むし歯の部分を除去して、人工のもので修復しても、再度むし歯になる危険性があります。その理由は大きく分けて、以下の二通りがあります。

①むし歯:以前に比べると、接着させるためのセメントは唾液で溶けなくなっていますが、歯の歯質と修復された人工物の境目はむし歯になるリスクが高く、また修復した歯自体が新たにむし歯になることがあります。

②根の病気:神経(歯髄)を取るような進行したむし歯は、歯の神経を露出させる前に細菌が侵入しています。その細菌はどんどん根のほうへ向かい、ついには象牙質を構成する細管に入り込みます。この中でずっと生きています。患者さんが疲れたり、風邪を引いたときなど、免疫機能が下がったときに活発化することがあります。そのために、再度むし歯になる危険性は残っているのです。

すべての治療は長所もあるし短所もある

歯科の治療は、処置が保険か自費かによっでも変わり、多岐にわたることが特徴です。むし歯で来院して痛みを取るだけでは歯科の特徴は活かせません。やはり、うまく噛める、うまく話せるという機能を回復させることが重要で、近年ではさらに審美(見栄え)の面も重視されるようになりました。

審美に関しては患者さん個々によって想いが異なり、処置の選択に大きな違いが現れます。同じむし歯の大きさでも、歯に近い色の充填物による修復で納得されずに、歯並びのバランスまで考え、歯全体の形を変える自費の人工歯を希望される方もいます。とくに上あごの6前歯(両側の糸切歯を加えた6本)は、顔の雰囲気を変えてしまうほど大きな影響を示します。

一方で、レンジという小さめの白い充填物による修復法は、歯の健康な部分を最大限残しますので、予後はよく長持ちします。しかし色彩面では切端部の透明感、歯肉寄りの黄ばんだ白、全体が均一な白、線が入ったような模様など、天然歯の特徴をすべてかなえるような対応は難しいです。やはりあなたの想いを順位づけして、何か一番気回なるのかをお伝えください。

☆審美治療とは:前歯の治療では、より天然歯に近い色調を再現することも可能です。みしま歯科医院にご相談ください。

抗菌薬の飲み方には?

抗菌薬は痛み止めのように一度服用するだけでよいかというと、それは間違いです。抗菌薬を服用すると吸収されて血中濃度が上昇ピークに達し、そこから漸減されていきます。血液中に溶け込んで、有効な濃度で有効な時間を維持しないと効果はありません。毒性発現を最小に抑えつつ、最高効果を得るように考えて処方します。以下の2つのタイプがあります。

①時間依存性抗菌薬:薬剤が細菌の発育阻止最小濃度以上を長く保つことで効果が得られるような薬剤は、1日の投与総量が同じならば、小分けにして投与することで効果を保つことができます。1日当たり3回(約8時間おき)といわれたら、食事の時間を意識して守ってください(サワシリン、フロモックス、ケフラールなど)。

②濃度依存性抗菌薬:小分けにするよりもまとめて1回投与するほうが、高い濃度が得られて、抗菌効果があります(ジスロマック、クラビットなど)。

 

薬剤に応じて適切に服用しないと、効かなかったり耐性菌を増やしてしまうことがあります。正しく服用してください。

8020(ハチマルニイマル)運動

高齢になっても自分の歯で食事をとり、豊かに楽しく過ごすためには、80歳で20本の歯を持つことで、全身の栄養状態も良好になり、よく噛むことで脳が活性化されます。その結果、認知症のリスクが軽減するという考えをもとに、診療所や地域におけるお口の健康を保持・増進する活動を、日本歯科医師会が推進しています。

8020達成率は運動開始当初はフ%程度(平均残存歯数4~5本)でしたが、厚生労働省の調査(平成17年歯科疾患実態調査)によると80~84歳では21.1%で、85歳以上だと8.3%にまで伸びてきています(日本歯科医師会、8020推進財団ホームページより)。また、厚生労働省の「健康日本21」では中間目標として8020達成率20%を掲げましたが、平成19年に出された中間報告では、それを上回る25%を達成しました。 しかし、まだ4人に1人です。仮に8020を達成己惑なかった方も、きちんと噛むことができる義歯などを入れて口の中の状態を良好に保つことで、20本あるのと同程度の効果が得られます。皆さんもすぐに実行し達成者の仲間に入ってください。

年齢相応のお口になりたいですか?

2005年のデータですが、65歳以上で約フ割の患者さんが義歯を使用しているのがわかると思います。現往、国民の4人に1人が65歳以上です。同じようなスタイルになりたいですか?お口のケアもたいへんなうえに、さらに義歯の清掃にも気遣いをしなければなりません。お口に合わない義歯を使っていると、さらに食べる気持ちも半減します。

あなたという個別生を理解して、最善の方法を考え、少しでも歯の寿命を延ばすためには、あなたのライフストーリーを知ってくれる主治医となる歯科医院を持つことがたいせつです。現往の日本の歯科医療技術は世界でもトップレベルです。このような安い治療費で、高いレベルの技術が提供されている国はほかにはありません。そのような環境で、患者さんが求めるのはもっと高いレベルの技術でしょうか。それとも主治医とは信頼性重視に関係性を求めることでしょうか。

すでに65幄以上の高齢者は3079万3千人。総人口に占める割合は24.1%と過去最高を更新中です(総務省2012年10月時点の推計人口)。

治療が完了しても 歯科検診は定期的に受けよう

治療が完了した後も、身体が年齢とともに変化するように、治療した部位を含めこ口腔内も変化します。再発を防ぐためにも、継続的な管理が必要です。

お口の病気は、自覚症状を感じたときは、かなり進んでいます。早期発見・早期治療は、健康を維持するための原則です。歯とお口の健康を守るために、歯科検診や歯科相談を受けるようにしましょう。

<定期検診の内容>

1.むし歯のチェック

2.歯周病のチェック

3.口の中の粘膜などのチェック

4.歯垢や歯石の除去

5.ブラッシング指導

6.歯科相談:あごの動き、噛むこと、飲み込むこと(摂食・嘸下)、お口のケアの仕方など。

 

行き着くところは「予防」です

どんなに良い治療をしても、もともとあった自分の歯にはもどりません。ほとんこの方は、とし歯や歯周病になって歯を何本かなくしてから、何とかしたいと考えるようになります。

しかし、それではなくした歯のぶんまで、隣の歯に負担をかけて処置せざるを得ません。健康にとって一番有益で、お金も手間も時間もかからないのが、ご自身による[予防]です。

むし歯になってしまって治療した後は、いままで以上にしっかりと「予防」に努めてトラブルを避けてください。治療が「やっと終わった」と思ったら、健康的な生活を取りもどすためにも、歯科疾患・歯科医療についてしっかりと理解していただき、歯科医院をうまく活用してください。歯科医療に対する嫌なイメージを振り払って、歯科への通院を自らの健康を保持するための積極的な行動に変容させてください。治療の精神的負担をなくすのは、あなた次第です。