☆インプラント治療Q&A その4 2023年版

インプラント治療後の メンテナンスつてなに?

1,口の中は細菌が繁殖するにはぴったりの条件がそろっているため、天然の歯と同様に、インプラントでもメンテナンスが必要です。
2,インプラントに悪い影響を与える因子としては、細菌による影響だけでなく、歯ぎしりや咬んだ力による影響もあります。

・口の中の細菌が繁殖する
天然の歯と同様にインプラントにもメンテナンスが必要です。その理由は、口の中は細菌が繁殖するにはぴったりの条件がそろっているからです。

・口の中でばい菌(=細菌)が繁殖したときは
真夏のように暑くて、しょっちゅう食べ物が供給されて、暗くてジメジメした場所ですから、常に細菌は増殖し続けます。指を切ってしまったり膝をすりむいたときには、ばい菌をそのままにして繁殖させてしまうと、傷口は腫れたり痛くなったりして治らなくなってしまいます。口の中でばい菌(=細菌)が繁殖した場合はどうなるでしょう。天然の歯とインプラントで同じように起こることは歯肉の炎症です。天然の歯では起こる炎症を歯周炎、病名としては歯周病といいますが、インプラントの場合の炎症は「インプラント周囲炎」と呼んでいます。炎症が起きても初期のうちは患者さんは何も感じませんが、放置することでインプラントの周囲でジワジワと悪化していくことになります。

・歯ぎしりや咬んだ力による影響も大きい
インプラントに悪い影響を与える因子としては、細菌による影響だけでなく、歯ぎしりや咬んだ力による影響もあります。天然の歯でも歯ぎしりをする患者さんは全く虫歯のない歯が睡眠中に割れてしまったり、銀歯(クラウ
ン)が土台ごとはずれてしまったりすることが頻繁に起こります。インプラントは、食事をするには十分以上の強度を備えていますが、睡眠中、患者さん自身が力のコントロールができない状況では、インプラントを急激に痛めてしまうことがあります。しかしながら、多くの患者さんは歯ぎしりをしていることを自覚していません。そのため、歯ぎしりがある患者さんについては、特に定期的なチェックが必要です。また、歯ぎしりをする患者さんは、睡眠中の力のコントロールのためにナイトガードというマウスピースを毎晩着用していただくこともあります。

・チッピングした歯を放置しない
チッピングといって、最終的なかぶせた歯の一部がかけてくることもあります。チッピングした歯を放置すると食べ物がはさまったままになる危険性があるために、やはり定期的なチェックを行って補修しなくてはいけません。

インプラント治療後の 定期検診つてなに?

1,インプラント治療後は、定期的に歯科医院にて検診とグリーニングを行う必要があります。
2,定期検診の周期は、医院によって若干差がありますが、通常3~6か月ごとに行われます。

・定期的に検診とクリーニングを行う必要がある
定期的に歯科医院にて検診とクリーニングを行う必要があります。これは、インプラントに限ったことではなく、虫歯が1本もない健康な歯をお持ちの方にもいえることです。日本では、欧米に比べて健康保険である程度までの治療を安価に受けることができるため、歯の健康に対する意識が低いといわれています。欧米には、例えば半年に1回、家族みんなで歯科検診に行くことが年中行事のように行われている国もあります。インプラントは、チタン合金、セラミック、ジルコニア等でできているために、二度と虫歯になることはありませんが、インプラント周囲炎が起こらないように、常に細菌が増えないように、ブラッシングに気をつける必要があります。インプラント治療は、高額なうえに相応の通院回数も必要になります。そこで、さらに定期検診まで義務づけられるとなると、治療に躊躇してしまう患者さんもおられることでしょう。定期検診を受けることに自信が持てない方は、現時点ではインプラント治療に不向きなのかもしれません。しかしインプラント治療後に定期検診が義務づけられたことによって歯の健康に対する意識が高まり、インプラント以外の天然歯も歯周病や虫歯の悩みから開放された患者さんが数多くおられることも事実です。
また、歯を失う原因として歯ぎしりが大きな問題としてクローズアップされてきています。歯ぎしりによる歯の崩壊は患者さん自身では気づかないことが多いですから、より検診の重要性は高まってきています。

・定期検診の周期は通常3~6か月ごとに行われることが多い
定期検診の周期は、医院によって若干差がありますが、通常3~6か月ごとに行われます。歯科医師は歯だけでなく口の中の粘膜疾患も対象ですので、頬や唇の粘膜、舌の粘膜、口臭の変化などのためにも定期検診は有効です。
また、全身状態の変化(糖尿病、血圧、脳梗塞等の新たな疾患、体重の変化)、生活の変化(引越、家族構成、職業等)といったこともとても重要なファクターですが、すべてのことを事細かに毎回歯科医師から尋ねられることはないと思われますので、患者さんの判断で随時担当医に伝えるようにしてください。
特に前回の検診日との間に他の病気や怪我で入院や手術をしたり、全身状態が急変した場合は、必ず報告すべきでしょう。インプラントを長持ちさせるためには歯科医師や歯科衛生士だけでなく、患者さん自身が積極的に参加していく必要があるのです。

・保証期間があるときは定期検診を受けていることが保証の条件
インプラント治療に対して「○年保証」といった保証期間を設けている医院も増えてきました。保証期間がある場合は、必ず定期検診を受けていることが保証の条件となっていることがほとんどです。何年も異常を放置したり、ブラッシングが悪い状態のままクリーニングを行わなかったりしては、トラブルの原因を自らつくってしまっているようなものです。

・引越しのために通院が困難になったときは
最も安心なのは、担当医に引越先から通院できる医院を紹介していただくことです。紹介してもらえなかった場合は、電話等で問い合わせたうえで通院を開始すればよいでしょう。海外でインプラント治療を受けられた患者さんが、国内で定期健診とメンテナンスを続けることも珍しくありませんからご安心ください。

インプラントを長持ちさせる 方法は?

1,インプラント治療は、とても高額な治療法ですが、高額だからといって、メンテナンスフリーで一生歯医者いらず、というものではありません。
2,高額な治療費とそれなりの治療期間を費やしたインプラントを長持ちさせるためには、いくつかのポイントがあります。

・インプラントを長持ちさせるためには
インプラント治療は、とても高額な治療法ですが、高額だからといって、メンテナンスフリーで一生歯医者いらず、というものではありません。極端に言えば、定期検診やご自身によるメンテナンスに自信がない方には不向き
であるかもしれません。すでに歯を失ってしまった原因があるのならば、それはそのままインプラントの予後も悪くする原因でもあるのです。高額な治療費とそれなりの治療期間を費やしたインプラントを長持ちさせるためには、いくつかのポイントがあります。

☆インプラントの動揺:患者さんが感じることのできる不具合としては、まずインプラント上部構造の動揺があげられます。上部構造が動揺する原因として考えられるのは、インプラントが骨から浮いてしまっている場合と、上部構造がはずれかけている場合などが考えられます。どちらも、歯科医院で一刻も早く処置する必要があります。

☆ 悪臭や出血が起きてきた: インプラント周囲より悪臭を感じるようになったり、出血があった場合は、インプラント周囲炎が原因となっている場合があります。 すべて口の中の細菌が繁殖したことで起こりますので、担
当医による診断の上、何らかの処置が必要となります。原因としては、ブラッシングの不良、長期間にわたる食べ
物の滞留、上部構造の緩み、インプラントの破折、糖尿病の方ならば全身状態の悪化、などが考えられます。その原因を除去することで炎症は治まります。

☆上部構造が欠けてきた(チッピンク):金属のみで上部構造を作製した場合は欠けてくることはありませんが、通常インプラントには、セラミック(陶器)かハイブリッドセラミック(陶器とアクリル樹脂を併用したもの)で作製することが多いために、このチッピングを完全に回避する方法はありません。チッピングの代表的な対処法は、上部構造と同じ白色の材料を用いた部分的な補修です。また、チッピングを放置することで知らぬ間に隣の歯との間に食べ物が残ってしまい、インプラント周囲炎の原因となることがありますのでご注意ください。

☆咬みづらいと感じる:補綴した直後には全く違和感を感じなかったものの、数日
もしくは数か月、長ければ年単位の期間ののち咬みづらいことを自覚したならば相応の処置が必要です。多くの場合、微調整で済みますが、インプラント以外の歯が崩壊してきた場合は新しい治療計画をたてることもあります。

☆咬むたびに異音がする: 食事中に「キュツ」といった異音がする場合は微調整、もしくは補修が必要となります。このような異音は、上部構造のチッピングや、他の歯が崩壊して咬み合う条件が変化した場合に起こります。異音がしたときは、何らかのサインだと思ってください。

☆顎関節症状: 両耳の穴の1~2センチほど前方に顎の関節があります。
インプラントの補綴だけに関わらず歯に何か詰め物をしてその調整が悪いと、この関節に症状が出ることがあります。代表的な症状は、①「パキ」「ジャリ」などの異音が発生する、②口を開閉するたびに痛みが生じる、③口を大きく開けられなくなる、の3つあります。第一選択としては、詰め物や被せものの調整に問題がないかを診断します。ここで異常が発見された場合は調整を行います。異常がなければ歯ぎしり等を疑い、睡眠中に装着するマウスピース(=ナイトガード)を作製することがあります。

☆見た目の変化:天然の歯と同様にインプラントもある程度の経年変化が起こります。基本的には咬むことができれば許容範囲内であります。

インプラントの磨き方は?

1,歯科医師や歯科衛生士が考える歯磨きは、常に口の中を細菌の増殖しにくい環境にするためのものなのです。

2,インプラントの一本一本の生え際は断面が円形ですから、円周全体を磨き上げるにはいろんな方向から磨く必要があります。

3,インプラントがインプラント周囲炎とならないためにはその生え際の磨き方が最も大事です。

・歯科医師や歯科衛生士が考える歯磨きは
インプラントを長持ちさせるためには正しいブラッシングを行い、常に細菌数を少ない状態に保ってインプラント周囲炎が起こらないようにしなくてはなりません。とはいっても、天然の歯も磨かなければ歯周炎が起きて歯が抜ける原因となりますので、インプラント治療をしたから余計な面倒がかかる、というわけではありません。歯磨きをする目的として、「口臭などで周りの方に迷惑をかけないように」といったエチケットを主眼においてされている方も多いかと思います。ところが、歯科医師や歯科衛生士が考える歯磨きは、物理的に汚れを除去し、細菌の繁殖しにくい環境にするためのものなのです。 1回の歯磨きを最低何分しましょう、といった標語もありますが、歯磨きの時間は短いよりは長いほうがよいとしても、時間だけでその効果が現れるわけではありません。相応のハミガキテクニックを教わりましょう。

・インプラント周囲炎とならないためには
インプラントがインプラント周囲炎とならないためにはその生え際の磨き方が最も大事です。極端な言い方をすれば、上部構造のほとんどはセラミックや金属でできていて、しかも炎症を起こす場所である歯肉とも接していませんので、ブラッシングする必要性は生え際よりもずっと低いのです。歯磨き、というと「歯」そのもの、すなわち歯の白い部分全体を磨くものだという意識があるのかもしれません。インプラントの一本一本の生え際は、断面が円形になっています。断面が円ですから、円周全体を磨き上げるためにはすべての方向から磨く必要があります。

・歯ブラシ以外の清掃器具というのは
そのほとんどは、一般的な歯ブラシで磨くことができますが、インプラントの埋入状況によっては、歯ブラシ以外の清掃器具を使う必要があります。歯間ブラシ・デンタルフロス・電動歯ブラシ・タフトブラシ。どれも強く磨きすぎると歯肉を傷つけることがあります。使用上のポイントは、歯肉に接触している部分の細菌を除去することです。とても難しいのですが、歯肉には傷つけないように、かつキレイに磨く必要があります。

・電動歯ブラシが有効なのは
インプラントの生え際は天然の歯と比べるとずっと細くなっています。そのため、上部構造との直径の差が大きく、一般的な歯ブラシでは届かない部分もあることが多いです。そのような場合には電動歯ブラシが効果的ではな
いでしょうか。電動歯ブラシも、各メーカーが各種製品を発売していますが、インプラントのように届きにくい場所がある場合は、音波歯ブラシが有効だと思います。音波歯ブラシはブラシの毛先が届いていない場所でも、音波の力でプラーク(細菌のかたまり)を除去できるものです。もちろん万能の器械ではないですし、音波が効果を発揮する距離も限られていますので、やはり歯間ブラシやデンタルフロスとの併用が必要となります。

・歯間ブラシ・デンタルフロスの使い方は
どちらも使用方法を間違えると、必要以上に当ててしまい、歯肉を傷つけることがあります。担当の衛生士に正確な方法を教わってください。

 

治療後に他の歯が悪くなったときは?

1,インプラント周囲炎が主な病態ですが、天然の歯では、歯周病以外に虫歯、歯根破折、補綴物の脱離などが起こります。
2,インプラント治療をした部位に問題がなくても、他の歯が悪くなってしまったら、全体的な問題に発展する可能性があります。

・天然歯であるがゆえに問題がある歯が残っている
インプラント以外の歯が悪くなることは当然あります。インプラントについては、インプラント周囲炎が主な病態ですが、天然の歯では、歯周病以外に虫歯、歯根破折、補綴物の脱離などが起こります。また、天然歯であるがゆえに、患者の希望や歯の状態によって問題がある歯でも口の中に抜歯されずに残されていることも多いです。

・全体的な問題に発展する可能性
インプラント治療をした部位に問題がなくても、他の歯がさらに悪くなってしまったら、全体的な問題に発展する可能性があります。悪くなった歯の場所や状態によって異なりますが、口の中は細菌が繁殖しやすく、温度変化も零度以下(例えばアイスクリーム)から、100度近く(例えばお茶)までの幅がある常に異常が起こる可能性を持っています。

インプラント周囲炎つてなに?かかったときの対応は?

1,インプラント周囲炎とは、天然の歯に起こる炎症・歯周炎に対応した言葉です。
2,インプラント周囲炎にかかってしまった場合は、歯科医院での治療が必要になります。

・インプラント周囲炎というのは
インプラント周囲炎とは、天然の歯に起こる炎症・歯周炎に対応した言葉です。インプラントはすべて人工物ですが、だったら放置しても変化しない、というわけではありません。インプラント自体は簡単に口の中で溶けてしまったりするものではないですが、インプラントが直接接触している骨と歯肉は細菌の侵襲に対しては弱いのです。インプラントの周囲に細菌が繁殖すると、まず接している歯肉に炎症が起こります。炎症が起こった状態では歯肉の腫れ、出血、場合によっては軽い痛みが生じます。しかしこの時点ですぐに細菌が除去できれば炎症は治まり、もとの健康な状態に戻ります。細菌の除去は歯ブラシやデンタルフロスによって可能です。ですから、正しい細菌の除去法(=プラークコントロール)がなされている必要があるのです。細菌が除去できずに放置されると、炎症はインプラントの生え際からさらに深部へと進行して行きます。歯肉の直下にはインプラントを支える骨が存在しますが、骨の近くまで炎症が進行してくると数段階のプロセスを経て骨を溶かす細胞(破骨細胞)が活性化され、徐々に骨吸収が始まります。最近では、インプラントを埋入するにあたってシビアなケースでも対応できるように、長さが6ミリ以下の製品も発売されています。短いインプラントを使用した場合にほんの少しの骨吸収でも本来期待した状態と比較してリスクが増えると思われます。

・インプラント周囲炎にかかってしまったときは
定期検診や、自分によるプラークコントロールによって日々細菌の増殖は抑えられていると思いますが、もしインプラント周囲炎にかかってしまった場合は、歯科医院での対応が必要になります。

☆軽度の炎症の場合:炎症が軽度である場合は、単純にプラークコントロールの不備にようることが多いでしょう。歯科医院で残存したプラークをチェックしてもらい、より正確なブラッシングやフロスの使用法などを覚えてくださしい

☆中程度の炎症の場合: インプラント表面に歯石が付着してしまっていたり、他の歯の変化によって咬み合わせの状態が変わってしまっていたりすると、中程度まで炎症が進行します。歯科医師による歯石除去、咬み合わせの調整が必要となります。上部構造が欠けたことにより、食べ物がつまりやすくなってしまっている場合もありますので、その場所は補修してもらいましよう。インプラントのインプラント体アバットメントを結合しているネジが緩むこともあります。緩んだ隙間には細菌が繁殖しますので、締めなおす必要があります。

☆重度の炎症の場合: 骨吸収が進んでしまっていることが多いです。骨が吸収していてもインプラントが機能的に問題がなければできるだけ炎症をコントロールして、それ以上の骨吸収をストップさせる必要があります。具体的な方法はその症状によりますが、場合によっては、上部構造をすべて外して歯肉を切開し、インプラント体表面を洗浄して骨の移植を行うこともあります。

インプラント感染症ってなに?かかったときの対応は?

1,インプラント周囲炎が進行したまま放置されると、インプラント周囲の顎の骨に重度の炎症が起こってきます。
2,インプラントの生え際の歯肉を押すと、乳白色の膿が出てくる状態になってしまったら、できるだけ早く撤去すべきでしょう。

・インプラント周囲炎が進行したまま放置されると
インプラント周囲炎が進行したまま放置されると、インプラント周囲の顎の骨に重度の炎症が起こってきます。重度の炎症が起こった状態では、すでに広範囲に骨吸収が及び、インプラント自体も動揺し始めます。インプラントの生え際の歯肉を押すと、乳白色の膿が出てくることもあります。この状態になってしまったらインプラント自体が汚染された異物でしかありません。できるだけ早く撤去すべきでしょう。顎の骨の中に汚染されたインプラントを撤去せずにいると、さらに炎症と骨吸収が進行し、重度の感染症を引き起こしかねません。重度の骨吸収は歯を支えていた骨だけでなく、周囲の神経や筋肉まで侵して麻條や機能不全を起こした例も報告されています。

・インプラントによる感染症の自覚症状は
インプラントによる感染症の自覚症状としては、インプラントの動揺・歯肉の著しい腫れ・膿が出てくる・臭いニオイがするなどが考えられます。

・自覚症状があらわれたときの対応は
こういった自覚症状があらわれたときは、定期検診の時期でなくても歯科医院で検査をする必要があります。自覚症状のある部位はレントゲン撮影によって、骨吸収を確認します。吸収の程度によって、リカバリーできる範囲か撤去すべきかを判断します。インプラントを撤去しなくてはならない状態であっても、骨が再生することができた場合は再度インプラントが埋人できる可能性があります。

・第一選択として、まずは炎症を抑える
インプラント感染症は細菌感染ですから、炎症を抑えるためにまず細菌の除去が必要です。軽度の場合は超音波スケーラー(歯石を除去する器械)によって感染したインプラント周囲を洗浄いたします。同時に抗生物質の軟膏(ペリオクリン、ペリオフィールなどのテトラサイクリン軟膏)を同じ部位に注入します。痛みや腫れなどの急性症状がある場合は、さらに飲み薬として抗生物質と消炎鎮痛剤を投薬します。これだけの対応で治まってしまう場合は、さらに歯磨きを徹底することでインプラントを撤去することなく使用することができます。

・切開して細菌を除去する
重度の炎症の場合には、歯肉を切開して細菌を除去することになります。サンドブラスターという機械でインプラント体表面を一層削り取る治療をするほうがより効果的です。いずれにしても、切開を行う場合は十分な麻酔を効かせたうえで行いますので、処置をするにあたっての痛みはないものとお考えください。また、切開した部分は糸により縫合しますので、約1週間後に抜糸が必要になります。数か月間予後を見ていく必要がありますが、しっかりと周りの骨が再生してくる症例も報告されています。

老化により歯茎が衰えるときのインプラントは?

歯肉は、天然の歯と同様、長い年月の間に退縮していくといわれています。

・歯肉が退縮して起こる問題は

歯肉は、天然の歯と同様、長い年月の間に退縮していくといわれています。歯肉が退縮していくときは、歯肉の下にある骨も吸収されていきます。残念ながらメンテナンスを慎重に行い、インプラント周囲炎を防ぐことができていても若干の退縮は必ず起こります。
歯肉が退縮して起こる問題で代表的なものは、・見た目の変化・食べ物があさまりやすくなる・発音に問題が生じる・メンテナンスがしづらくなる ものが考えられます。

・歯肉の退縮による見た目の変化に対応する方法は
インプラントの上部構造で一番大事なのはご飯を食べる、という機能が果たせているかどうかです。外見のわずかな変化のためにすべてをつくり直すことはおすすめいたしません。
しかしながら、前歯部で見た目が著しく悪くなってしまった場合は、上部構造だけでも再製作できるかどうかを担当医に伺ってください。費用は患者さんの負担になってしまいますが、再製作するリスクとメリットを十分説明していただいたうえで考えてみてください。歯肉の退縮による見た目の変化に対応できるように、近年では白色のジルコニアアバットメントが開発されています。ほとんどのインプラントメーカーが対応して生産を始めていますので、そろそろ標準的な方法となってきています。以前は歯肉が退縮した部分が銀色のアバットメントが露出してきましたが、これにより白色にすることで露出しても目立たないわけです。

・歯茎(歯肉)が衰えるスピードは
インプラントの部分だけが他の天然歯と比べて極端に衰えていく可能性は低いでしょう。天然の歯において、歯肉が衰えたために機能的な問題が出ることは稀ですから、インプラント周囲の歯肉も同じようなスピードで退縮し
ていくものと考えられます。ゆっくりとした変化には多くの患者さんが気づかない場合が多く、体や口の中の間隔が順応していくために問題も起きにくいと思われます。もし、インプラント周囲の歯肉に急激な変化が起こってきたならば、老化によるものよりもインプラント周囲炎等の病的なものを疑うべきでしょう。その場合は、定期検診の時期を待たずに早めに担当医に相談していだだく必要があります。

・老化に対する問題点は
単なる老化によって歯肉が衰えることよりも、体力が落ちたためにインプラントに問題が生じることは多いと思います。患者さんが事故や病気で寝たきりになってしまった場合などは、自分による歯磨き(=プラークコントロール)が困難になるためにインプラント周囲炎を起こすことがあります。もし、家族でインプラントを使用しているのに寝たきりになってしまった患者さんがおられるならば、ぜひとも介護士等と協力して口の中の衛生状態を良好に保つ努力が必要です。

インプラントがぐらぐらするときは?

・インプラントがぐらぐらするときには、できるだけ早く歯科医院に行かなくてはいけません。

・インプラントがぐらぐらする原因は
インプラントがぐらぐらするときには、できるだけ早く歯科医院に行かなくてはいけません。ぐらぐらする場合は、主に・上部構造のセメントが崩壊している・上部構造のねじ止めしている部分が緩んでいる・インプラント体自体が骨と結合していない・アバットメントが破折している・インプラント体自体が破折している の4つが考えられます。

・セメントの崩壊というのは
最も単純な外れ方です。特に最近は仮止め用のセメントを最終的なものとして使用していることが多いので、使用しているうちに外れてくることもあります。再度咬み合わせを確認したうえで着けてもらってください。頻繁に外れるようならばセメントの種類をもう少し硬いものに変更することもあります。

・上部構造のネジ止めが緩んでいるというのは
インプラントの上部構造には毎日食事をするたびに大きな力がかかるため、途中で接続しているネジが緩むことが起こります。これを締めなおすために、最終的なセメントには仮止め用のものを使うことが多いのです。緩んでいるだけでなく上部構造の一部であるアバットメントが欠けていることもあります。その場合は、新品のアバットメントに交換することもあります。

・インプラントの歯根部分自体が骨と結合していないというのは
インプラントの歯根部分(フィクスチャー)が骨から離れて動揺を始めた場合、多くは撤去しなくてはいけません。インプラントの撤去が早ければ、再度埋入術を行えることもあります。インプラントの上部構造が動揺してくるには、歯ぎしりなどの力が加わっている可能性が高いです。もし、それまで睡眠中にマウスピース(=ナイトガード)を使用していなければ早めに作製して毎晩使って、上部構造が壊れることを予防してください。

・アバットメントが破折しているというのは
インプラント体に結合させるパーツである「アバットメント」が破折してしまうことがあります。メーカーが想定している以上の力が一箇所に加わることが原因ですが、アバットメントは取り外せるパーツなので再製作が可能なことが多いです。インプラント体にまで問題が及んでいなければ印象を採り直して製作します。想定していた以上の力が加わる原因としては、近接している天然歯が過度の磨耗をしたことやインプラント以外の天然歯が抜けてしまったことによる負担の増加が考えられます。また、完成時には考えられなかったレベルの歯ぎしりや咬み締めなどの習癖が現れたこともあるかもしれません。

・インプラント体自体が破折しているというのは
インプラント体自体が破折しているためにぐらぐらしてくることがあります。この場合は、ただちにインプラント体自体を除去する必要があります。破折したインプラント体を放置するとその部分が細菌感染して炎症が起き周囲の組織が破壊されていくからです。破折してからの時間が長いほど骨を失う量が増えることになるために再治療が困難になります。一般的に直径の細いインプラント体は力学的に弱いため破折しやすい傾向にあります。骨の状態によっては細いインプラント体しか使えない部位もありますので、その場合は本数を増やすなどの対策が必要となります。

インプラントによる出血が 止まらないときは?

1,出血の原因は、インプラント周囲炎が起こっているからです。
2,出血が止まらない、ということは通常のブラッシングでは除去できない部分の細菌数が減らないからです。

・出血の原因は
出血の原因は、インプラント周囲炎が起こっているからです。天然の歯でも歯周炎が起きると出血することがありますから、同様の炎症がインプラントでも起き、そして出血するのです。炎症が起こるのは、口の中の細菌が増加したまま放置されているからです。口の中の細菌のかたまり(プラーク)はとても柔らかいので、歯ブラシなどの清掃器具がきちんと当たれば除去できます。出血が止まらないのは、通常のブラッシングでは除去できない部分の細菌数が減らないからです。

・出血を起こさないためには
インプラント周囲の歯肉から出血が起こる、というのは炎症がある程度進行してからのことですから、それ以前に口の中の状態を観察していけばかなりの割合で予防できるはずです。定期検診を受けることはもちろんですが、インプラントの生え際に細菌のかたまりが残っていないかをご自身でチェックするといいでしょう。綿棒などでインプラントの根元を全周拭ってみただけでも確認できると思います。出血以前の症状としてはこういった細菌の付着だけでなく、細菌が発する悪臭、歯肉の違和感(むず楳いなど)があります。

・全身疾患も疑う
長期間出血することなく良い経過をたどってきたインプラントから急に出血するようになった場合は、全身疾患の変化も疑ってみる必要があります。糖尿病の悪化、血液疾患、服用している薬の影響、などが考えられます。

・手術直後の出血がとまらないときは
全身疾患が特にない患者さんでも、手術の翌日まで微量の出血が続くことがあります。この場合、必ず血は止まりますが、心配な場合は次回の予約を早めて担当医に診てもらうと安心です。

インプラントによる腫れがひかないときは?

1インプラントの部分が腫れてくるというのは、出血だけしてくるレベルと比べてかなり炎症が進行している状態です。
2腫れてきている部分はインプラント周囲の骨が吸収され、繁殖した細菌に対抗するために自分の免疫が慟いて炎症が起こっています。

・インプラントが腫れてきた原因は
インプラントの部分が腫れてくるというのは、出血だけしてくるレベルと比べてかなり炎症が進行している状態です。腫れてきている部分はインプラント周囲の骨が吸収され、細菌も繁殖しています。繁殖した細菌に対抗するために自分の免疫が働いて炎症が起こっています。
インプラントが腫れてきた原因は、・インプラント体の破折・荷重負担・メンテナンス不良・体調の変化と生活の変化のものが考えられます。

・インプラント体の破折というのは
めったに起こることではありませんが、十分な強度をもつインプラント体でも破折してしまうことがあります。折れてしまったインプラントは、速やかに撤去する必要があります。専用の器具にて除去し、可能であるならば再度インプラントを埋人することもあります。

・過重負担というのは
複数のインプラントを埋人した症例では、上部構造は連結したものをつくります。このとき、特定のインプラントのみに周囲の骨が吸収されることがあります。構造上、一部に限局して咬む力が集中してしまったのでしょう。まずはその負担を減らすべく咬み合わせの調整を慎重に行って行きます。同時に超音波による洗浄や抗生物質の局所投与などを行います。

・メンテナンス不良というのは
インプラント周囲の組織が腫れる原因は口の中の細菌ですから、メンテナンスがうまく行っている必要があります。ただし、歯磨きが悪いだけではインプラント周囲の組織が大きく腫脹するまで至ることは稀です。

・体調の変化というのは
糖尿病や血液疾患などの全身疾患が関係している可能性があります。内科等で新たな疾患や、既往がある病気の悪化が判明した場合は、直ちに歯科の担当医に伝えてください。また、慢性関節リューマチでは手指の動きが制限されてしまうため、自在に歯磨きができなくなってしまいます。電動歯ブラシの利用など、歯科衛生士に可能な範囲でのよりよいメンテナンス方法を教わってください。シェーグレン症候群では唾液が減少してしまいますのでプラークが付着しやすくなり、インプラント周囲炎が起きる原因となります。これ以外でもてんかんの薬であるフェニトイン、高血圧・狭心症の薬であるニフェジピンを使用されている方は歯肉が増殖することがあり、炎症を悪化させることになりますのでご注意ください。

・腫れの大きさと位置について
歯肉の腫れといっても、生え際に限局したわずかなものならば、歯磨き(プラークコントロール)だけでほとんど改善できることがあります。舌や指で触ってみて明らかなふくらみがあったり、鏡を見て左右非対称になるほどの腫れは、外科処置が必要なレベルです。大きく腫れた場合でも、特にその位置が上顎の側面から目の下にかかる部分ならば上顎洞という副鼻腔の炎症かもしれません。現在では、上顎洞にまで達する位置にインプラントを埋入することも多く、炎症が起きる可能性は以前より増えてきました。

カウンセリングつてなに? 利用のしかたは?

(1)インプラント治療は、高額で治療回数も必要としますので、正確に治療内容を理解する必要があります。

・インプラント治療のカウンセリングの内容はインプラント治療は高額で治療回数も必要としますので、患者さんも正確に治療内容を理解する必要があります。 インプラント治療のカウンセリングでは、・他の治療との比較・費用・期間・痛みや腫れについて・予想される予後・全身疾患との関係・耐用年数・自分の骨の状態・偶発症の内容を説明してもらうとよいでしょう。

・他の治療法との比較のカウンセリングは
インプラント治療を選択すると、ブリッジや入れ歯などの他の治療方法と比較して、どのようなアドバンテージがあるのか、ということをよく理解していただく必要があります。また同時に、過大な期待をすることのないように、より深い情報を教えてもらいましょう。

・費用のカウンセリングは
失った歯の本数によって異なります。また、同じ本数でも上部構造によって治療費に幅が出てくることも多いのです。歯科医院によっては、治療費としてすべて含み一括で提示してある場合と、治療のステップごとに分割して提示する場合とがあります。治療費についてしっかりと説明してもらい、患者さんが納得することは双方にとって必要なことなので、疑問があれば遠慮せず聞いてみてください。治療費が曖昧なまま治療が進み、後々お金のことで不満を感じるようになってしまってはせっかく良い治療がされたとしても双方に満足は得られないでしょう。

・治療期間のカウンセリングは
治療期間は、治療結果を左右する重要なポイントです。近年の多くの研究や、インプラントシステムの進歩などによって、治療期間は短くなってきていますが、期間の短縮だけに目を向けず、多少時間がかかっても安全な治療となるかどうかも大変重要です。また、インプラント治療には、相応の期間と回数がかかりますので、最後まで通いきれるかどうかも考えるポイントといえるでしょう。

・痛みや腫れのカウンセリングは
インプラント埋入術自体は、麻酔下で行うために基本的に痛みを感じません。問題は術後に麻酔が切れてきたときに、どうなるか、という説明をしてもらうことです。、麻酔が切れた後痛みで苦しんだ、という方はいらっしゃ
いません。しかしながら痛みの大きさは本人にしか判断できないものなので、手術後は痛み止めを必ず飲んでもらいます。痛み止めを飲むことになるリスクが低いことを考えると、術後にかならず服用していただくことが最善
の方法と思われます。術後の腫れについては、外科処置ですので、程度の差はあれ避けようがないことだと説明されると思います。処置後の腫れの大小で予後が変わるということはありませんので、もしも腫れた場合でも、しばらくの期間、安静にしておけばじきにひいてくることがほとんどです。カウンセリングの段階で、術後の腫脹について説明を受けることがあると思いますが、腫れる可能性はゼロにはできないと思ってください。

・予想される予後のカウンセリングは
インプラント治療は、従来の入れ歯やブリッジと比較して、圧倒的に良い治療法ではあります。しかしながら、一番性能が良く、安心であるのは自分にもともと生えていた天然歯であることをご理解ください。すなわち、インプラントは最高の歯である天然歯の代用品でしかないのです。天然歯が抜け落ちた後の骨は、場合によっては相当吸収が進んでいることも関係しています。また、審美的にも20代にまで若返ることは難しいでしょう。あくまでも機
能的に入れ歯より優れている、あるいはブリッジよりも歯を削らなくて済
む、といった観点から選択していただく必要があります。予後についても、ちゃんと咬めるかどうかが判断の基準となります。部分的な審美性は大事ですが、保証の対象外と考えたほうが無難でしょう。それでも多くの歯科医師は、機能だけでなく審美性も満足なものになるよう目標にしており、現在多くの学会で研究・議論がなされています。

・全身疾患との関係のカウンセリングは
インプラント治療は、全身疾患の有無も問題となります。糖尿病や血圧がしっかりコントロールされていないと、埋入術を行うことができません。また、抗血栓薬を飲んでいる場合は、内科の担当医と休薬についての打ち合わせをする必要もあります。そのため初診時に記入する問診票には、これらの事柄についてもれなく記入する必要があります。

・耐用年数のカウンセリングは
天然の歯でも必ず経年変化します。ですから、インプラントも年月が経つにつれて全く変化がない、というのは不可能です。また、個々人によって使われる環境が非常に異なるために、平均値でしか耐用年数を申し上げることができませんが、もし何かがあったときにどのような対応をしてくれるのかの説明はしてもらっていたほうがいいでしょう。

・自分の骨の状態のカウンセリングは
インプラントは骨の幅、高さ、量があればあるほど予知性の高い症例となります。しかしながら近年の技術の向上により、骨が少なくてもインプラント治療は可能になってきています。骨がない分だけ予知性は若干下がりますが、他の治療方法との比較においてアドバンテージがある場合だけ、歯科医院では第一選択とされるわけですから、正確に自分の骨の状態を知ることが重要です。相応のリスクがあっても、インプラントを選択するのか否かということは、歯科医師にとっても知っておくべき情報なのです。

・偶発症のカウンセリングは
インプラント治療においては、いくつかの偶発症が考えられます。口の中にはいくつかの大きな動脈、神経が存在します。また、骨が少ない場所に埋入せざるをえない症例も多々あります。確率としては非常に少なくても、カウンセリング時に起こりうる偶発症についての説明は必ず確認してください。偶発症について、その確率がゼロでなくてはインプラント治療をしたくないという方は、この点の問題をクリアーにしてから治療を開始すべきでしょう。

・カウンセリングで納得できなかったら
ここまでのカウンセリングで納得できない部分があれば、どんどん歯科医師に質問してください。また、インプラント治療を行っている歯科医院が近隣にいくつかあるならば、ぜひセカンドオピニオンを伺うことをおすすめいたします。他院でのセカンドオピニオンを受けたうえでインプラント治療を理解していただくことは、歯科医師にとってなんら不都合はないことですのでご安心ください。それでも他の治療と比べて優位性を感じられなかったり、治療費の負担が大きすぎると思われる方は、現状ではインプラント治療には向いていない可能性があります。

・カウンセリングで感じたこと
何回かのカウンセリングで、担当医との意思疎通に不都合を感じたり、少しでも不安な部分がある場合も、無理にインプラント治療を開始すべきではありません。大切な時間とお金をかけて口の中を再建するのですから、多くの歯科医院でも治療以上にカウンセリングに時間をかけることが多いです。

 

インプラントの実際の 使い心地の判断は?

(1)歯科医師が判断する使い心地の判断基準としては、7つあります。

・歯科医師の使い心地の判断基準は
歯科医師が判断する使い心地の判断基準としては、・食事がきちんとできるか・異物感はないか・発音にもんだいがないか・審美性にもんだいがないか・痛みがないか・他の歯に悪影響を及ぼしていないか・顎の関節に負担がかかっていまいか のようなものがあります。

・食事がきちんとできるか
基本的に、最も大事なことは食事がきちんとできているかどうかです。食事は栄養補給という意味も大事ですし、美味しく食べることができて楽しい、ということももちろん大事です。インプラントは入れ歯などの他の治療法と比べて、この「食べる」という点において圧倒的に有利です。ですから、使い心地として違和感があるということは、まだ調整が必要だったり、何か異常がある可能性もあります。早めに担当医に相談してください。上部構造の装着直後から異物感、発音障害、審美的な問題で気づいた点があれば、よく担当医と相談し、可能な範囲で調整・修正していただきましょう。 もちろん、インプラントは天然歯の代用品ですから何もかも希望が叶うわけではありませんので、この点が心配な方はインプラントの治療計画の段階で担当医とよく相談し、納得されてから治療をはじめたほうがよいでしょう。

・異物感はないか
異物感については主に舌の感触の違いを訴える方が多いです。舌の感触は非常に繊細ですので、ある程度以上の感触の違いは慣れが必要でしょう。それでも明らかに舌が痛くなってしまったり、食事中に咬んでしまうようではインプラントを使い続けることは困難だと思われます。できれば仮歯の間によく調整をし、満足できる状態になってから最終的な歯をつくる過程に向かうべきでしょう。

・発音に問題がないか
発音についても、いわゆる「入れ歯」とはまったく違った自然に近い発音ができるのがインプラントです。これも仮歯の段階でかなりの調整が可能です。発音については慣れることも必要ですので仮歯である程度の期間を要する方もいらっしゃいます。人工物であるインプラントの限界を知ったうえで、できる限り自然な発音ができることを目指してください。なお、管楽器を職業とされている方の場合は、難症例に属するものだとお考えください。木管楽器、金管楽器に関わらず慣れたアンブシュア(演奏中の唇の形)と人工の歯ではそれなりに違いがあります。奥歯の場合は、問題は少ないですが、インプラントが前歯を含んだものの場合は相応の慣れと練習が必要になるでしょう。

・審美性に問題がないか
審美性は現在インプラント学会でも話題の中心です。すなわち、それだけインプラント治療で完璧な審美性をつくることは難しいのです。また、患者さんに満足していただいた上部構造でも、食事や歯ぎしりで一部にチッピングが起こることがあります。その場合は、部分的な修復で対応できることが多いです。

・痛みはないか
痛みについては、できるだけ早期に担当医に伝えてください。痛みを感じるというのは、致命的な損傷をインプラントに与えている可能性があります。早期ならばリカバリー可能なことが多いですから、諦めずにご相談ください。インプラント治療は、再度埋人術を行うことができる場合も多くありますので、痛いまま放置することは避けなくてはいけません。

・他の歯に悪影響は・顎の関節に負担は
他の歯への影響、顎の関節への影響は専門家である歯科医師でないと判別が難しいでしょう。最終的な歯が入ったあとも、歯科医師に指定された期間に必ず検診を受け、咬み合わせの再チェックを必ずしてもらってください。
とりあえずインプラント治療も上部構造が完成した時点で安心してしまった一部の患者さんが来院されない場合もあり、その後不具合が起こるケースもあるようですので、ご注意ください。

・使い心地だけでは判断できないこと
患者さんから使い心地について訴えがない場合でも、例えば、次の点は定期検診で問題が発見される場合があります。
①チッピング、といって一部が欠けている。
②磨き残しによる軽度の歯肉炎が起こっている。
②微小な動揺が起こっている。
④周囲の歯の磨耗によって咬み合わせが変化している。
⑤複数のインプラントが連結されているときに一部のインプラントが骨との結合を失っていながらも動揺が顕在化しない場合。
・その他に患者さんから質問されること
主な判断基準をあげましたが、これ以外に患者さんからインプラント治療後に生活に支障を来さないかと質問される事項がいくつかあります。主なものとしては、①味覚への影響、②MRIなどの画像診断機器への影響、③金属アレルギーへの影響、などがあります。基本的にどれも大丈夫なのですが、心配な場合は担当医にお尋ねください。