歯周病関係

タバコは歯周病の発病や進行の危険因子ですよ!

喫煙は歯周病にとって最大の危険因子です。ヘビースモーカーであるほど、歯周病の悪化が著しく、治療の効果も妨げてしまいます。

 ・タバコを吸うと歯周病の発見を遅らせます!
 歯周病はもともと自分自身では気が付きにくい病気です。歯肉が大きく腫れて痛くなったり、歯が動揺して咬めなくなった時は手遅れです。歯周病の初期では歯肉が赤く、ぶよぶよしたり、また、出血がみられます。しかし、喫煙していると、ニコチンなどの影響で、このような初期症状があまりなく、気が付かないまま症状が進行してしまいます

・タバコは体の免疫機能の弱めます!
 人間の体には、細菌などに対する防御機能である「免疫」が備わっています。口の中にも免疫機構があり、歯周病の原因となる細菌などに抵抗するのですが、ニコチン等の有害物質が免疫系に影響を与え、その機能を低下させます。その結果、歯周病にかかりやすくなったり、すでにかかっている場合は歯周組織の破壊がすすみ、悪化の一途をたどるのです

・タバコが治療効果を妨げます!
 歯周病の治療には、歯周ポケットにすみついた細菌のかたまりや歯石を取り除く歯面清掃や歯石除去を行います。しかし、これらの治療を行っても喫煙していると、治療してきれいになった歯根面にニコチンなどが結合して、病巣を治そうとする細胞の働きを妨げてしまいます。また、タバコが歯周病の原因菌をすみやすく、せっかくの治療効果が妨げられてしまいます。

もし、現在喫煙しているのでしたら、無理せずに明日からたばこを1本減らすことから始めましょう!それが最初の一歩ですよ。(-。-)y-゚゚゚

たばこを減らして、健康なお口のなかに!!

こんなに怖い歯周病!

歯周病のメカニズムの基礎知識と治療法

☆歯周病ってどんな病気?

健康な状態では、歯と歯ぐきはぴったりくっついています。

歯周病とは、歯周病菌がこの歯と歯ぐきの隙間に入り込み、やがては歯槽骨(歯を支えている骨)に達し、この骨を溶かしてしまう病気です。

骨を溶かしてしまうなんて、歯を溶かしてしまうむし歯菌と同じくらいこわいですね。

もちろん、歯槽骨が溶けてしまったら、歯を支えることは出来ませんので、歯が健康であっても抜けてしまいます。
しかも、今や成人の8割が歯周病であると言われています。

そして、むし歯は歳をとるにつれてかかりにくくなるのですが、歯周病は、逆に、歳をとるにつれて進行します。

このように、ほとんどの人がかかっている上に、骨が溶け、健康な歯でも抜けてしまう怖い病気なのですが、本当に怖いのはこれだけではありません。

 

☆どうして歯周病になるの?

歯周病菌も、むし歯菌とおなじく歯に付いた食べかすを栄養源にしています。

この食べかすに、歯周病菌がとりつくとプラーク(歯垢)ができます。

皆さんの歯の表面はぬるぬるしていませんか?このぬるぬるがプラーク(歯垢)です。

「プラークコントロール」という言葉を聞いたことがありませんか?このぬるぬるを取ることが「プラークコントロール」です。
きちんと歯磨きをしているのに、なぜ多くの方が歯周病にかかってしまうのでしょうか?
実は、ほとんどの方がきちんと歯磨きをしても、食べかすがきれいに取れたところで、「歯がきれいになった」と思っていることに原因があります。

一度、歯医者さんできちんと歯磨きの指導を受けて、「これで完全だ!」というくらい歯を磨いてみてください。それでも、歯の表面がなんとなくぬるぬるしていませんか?
そう、プラークは歯磨きをしたくらいでは落ちないのです。
さて、このプラークはその後どうなるのでしょう?
プラークは、やがて唾液中のカルシウムやリン酸を取り込み固まります。これが皆さんご存知の歯石です。
歯周病菌は、空気に触れると死んでしまうため、プラークという細菌の集団と歯石を作りながら歯茎の奥へ奥へと進んでいきます。このため、歯ぐきが歯からはがれ、炎症を起こして腫れたりするのです。こうなると、もう重症です。
しかも、恐ろしいことにこのときまで、ほとんど自覚症状らしいものは現れません。

そして、気が付いたときには、すでに重症なのです。

 

☆歯周病の治療方法は?

歯周病の治療についてですが、現在、さまざまな治療法が研究されていますが、完全に歯周病を治療することはほとんど出来ません。
その1つの原因としては、たとえ一時的に歯周病菌を除去出来ても、誰のお口の中にでも、つまり家族のお口の中にも歯周病菌がいるので、自然と感染してしまうのです。
もちろん、一度歯周病にかかり、歯ぐきが歯からはがれてしまうと、ある程度引き締めることはできますが、完全に元通りには出来ません。ですから、再度歯周病菌に感染すると、以前に出来た歯ぐきと歯の隙間に簡単に取り付いてしまいます。
ですから、最善の歯周病治療は、定期的にお口の中をきれいにすることです。(3~4ヶ月に一度の定期的なプロによるクリーニング)

さきほどご説明しました「プラーク(歯垢)」はいくらきちんと歯磨きをしても取り除くことは困難です。
完全なプラークの除去をするには、歯科医院での歯科衛生士によるプロが専門の器械を使って定期的に除去しなくてはなりません。

そこで、みしま歯科医院では、お口の状態に合わせた日ごろのケアの方法だけでなく、3~4ヶ月に一度の定期的なご来院によるお口のチェックとお手入れをご提案しています。

歯周病リスク、受動喫煙が喫煙より高い数値!

たばこを吸わない人でも、ほかの人のたばこの副流煙にさらされると歯周病リスクが高まるという研究結果を国立がん研究センターと東京医科歯科大の共同研究グループが発表した。男性の非喫煙者で、家庭と家庭以外で受動喫煙した人の場合、非喫煙者で受動喫煙の経験がない人に比べリスクは約3.6倍となり、喫煙者のリスクを上回る結果だった。このため、同グループは喫煙者に対し、「自分や家族の健康のために禁煙を」と呼び掛けている。

この研究は、生活習慣とがんなどの生活習慣病との関連について追跡調査する多目的コホート研究の一環として実施された。1990年の生活習慣などのアンケート調査に答えた、秋田県 横手保健所管内に住む40-59歳の男女を対象に、歯科アンケート調査への回答と歯科検診を受けてもらい、そのうち1164人(男性552人、女性612人)を対象に解析した。

対象者を男女別に「受動喫煙経験のない非喫煙者」から「喫煙者」まで6つのグループに分けるとともに、6ミリ以上の歯周病ポケットが1歯以上ある場合を重度の歯周病と定義した上で解析したところ男性の場合、受動喫煙経験のない非喫煙者に比べて、喫煙者の重度の歯周病リスクは約3.3倍に跳ね上がった。 

 しかし、非喫煙者でも家庭と家庭以外で受動喫煙経験のある人の場合は約3.6倍と喫煙者を上回る数値となった。家庭のみで受動喫煙経験のある非喫煙者も約3.1倍と高かった。家庭以外のみの受動喫煙の場合は約1.3倍だった。ただ、女性については喫煙・受動喫煙の状況と歯周病との間に関連は見られなかったという。

 たばこのニコチンは、歯周病を引き起こす歯周病菌の発育を促進し、その病原性を高める働きがある。また、喫煙そのものが全身の免疫力を低下させ、歯を支える組織の破壊を助長するため、歯周病菌に感染しやすくなる。受動喫煙でも同様のメカニズムが働くと推察されるという。 

研究グループは、「喫煙は歯の健康を低下させるリスク要因であることが確認された」とした上で、「歯周病は糖尿病など他の病気のリスク要因でもあるので、予防や治療を心掛ける必要がある」としている。 

歯のない口腔内に歯周病菌はいない?

「歯がなくなれば、歯周病菌が棲む歯周ポケットもなくなるので、歯周病菌はいなくなるのでしょうか? 総入れ歯になれば歯磨きは必要ありませんか?」と聞かれました。どう答えればよいでしょうか?

すべての歯がなくなっても歯周病菌は口腔内に棲息しています。

歯周病菌はすべての歯がなくなっても、口の粘膜である舌、口腔底、口蓋、頬粘膜、口腔前庭、歯肉の表面に棲息することがわかっています。特に舌苔には多くの歯周病菌が含まれており、舌苔の量が増加すると歯周病菌も増えます。さらに、歯周病菌は口の粘膜の組織内や細胞の中にも棲息できることが知られています。

総義歯を入れている人の口腔細菌を調べた最近の研究では、Porohyromonas gingivalis(P.g.菌)などのいくつかの歯周病菌が唾液から検出されています。

P.g.菌は、動脈硬化性疾患や関節性リウマチに関与するという報告がある菌です。また、義歯の粘膜面や人工歯からも歯周病菌が見つかっています。総義歯の装着後に口腔内の歯周病菌の検出率が上昇したというデータもあります。清掃が不十分な義歯では、手入れがよい義歯に比べて歯周病菌の検出率が高くなります。さらに、歯周病菌の増加にともない、義歯による口内炎の原因となるカンジダ菌も増加します。

このような理由から、歯がなくなっても、毎日の手入れで口腔内と義歯を清潔に保つことが大切であることを、伝えましょう。

歯周病予防に必要な栄養素は?

歯周病を防ぐために必要な栄養素について質問されました。今わかっている歯周病に関連する栄養素について教えてください。

さまざまな栄養素が歯周病との関連について報告されています。

歯周病に対して栄養素は重要な役割を果たしています。さまざまな栄養素が、全身における感染予防や創傷の治癒促進にかかわることから、歯周病に対する感受性や歯周病の進行に影響を与えていると考えられます。

まず、主要栄養素についてはバランスのよい摂取が大切です。近年、タンパク質であるカゼインや乳清の摂取量が多い人は歯周病リスクが低いという報告がなされています。また、体脂肪が高い人は歯肉出血の増加が見られる一方、オメガ3脂肪酸は歯周病において炎症反応を抑制することが報告されています。

次に、微量栄養素について、ビタミンCはコラーゲンの生成や酸化ストレスへの耐性に必要です。その摂取が低い人(0~29mg/日)の歯周病のリスクは、摂取量が多い人(180mg以上/日)の1.3倍であったという報告もあります。また、カルシウムとビタミンDの摂取が歯周治療に良い影響を与えるというデータや、マグネシウムの摂取が歯周病や歯の喪失を予防するというデータもあります。

ここ数年、歯周病と栄養の関連が多く報告されています。バランス良く栄養素を摂取するよう食事指導を行うことは、歯周病予防や歯周組織治癒の手助けとなるでしょう。

加齢が歯周組織に与える影響は?

80歳を超えると、それまで安定していた部位に、歯周炎の進行や再発を認めることがあります。加齢は、どのような機序で歯周組織に影響を与えるのでしょうか?

加齢による3つの変化により歯周組織の炎症が起こりやすくなります。

高齢者の歯周病では、生活習慣の経年的な蓄積や基礎疾患の影響が大きくなることに加えて、加齢にともなう3つの変化により、歯周病菌に対する歯周組織の炎症が起こりやすくなると考えられています。

1つめは、免疫機能の低下です。免疫系細胞のなかで中心的役割を果たすT細胞は胸腺で育ちます。胸腺は加齢とともに小さくなるため、血中における新たなT細胞の数の減少や機能低下につながり、免疫力が落ちます。

2つめは、細胞の老化です。実験的に老化させたヒト細胞を用いた研究では、老化歯肉線維芽細胞は、若い細胞に比べて、歯周病菌の内毒素の刺激に対する応答性が高く、歯周組織の破壊に関与する炎症性物質を多く産生することが報告されています。

3つめは血管の変化です。動脈の加齢変化である内膜肥厚は、歯周組織の栄養血管である下歯槽動脈でも起こります。これは、歯周組織の血行障害を引き起こし、自然治癒力や感染抵抗性を低下させる可能性があります。

高齢者の歯周メインテナンスでは、良好な口腔環境の維持に加えて、全身状態や上記の加齢による変化も考慮しながら、治療計画を立てることが重要です。

糖質制限は歯周病予防にもなる?

炭水化物の摂取を制限する糖質制限は、う蝕だけでなく歯周病の予防にも有効であるという話を聞きましたが、なぜでしょうか? 歯周病の予防のため、糖質制限を指導するべきですか?

糖質制限は、糖尿病の予防を介して、間接的に歯周病予防につながると考えられます。

炭水化物の過剰摂取によって、血液中に糖質が過剰に存在する「高血糖」状態になると、終末糖化産物(AGEs)が血中で増加します。このAGEsが毛細血管の内皮細胞に存在するレセプターと結合すると、NADPHオキシダーゼを活性化し、活性酸素種が過剰に発生します。その結果として「酸化ストレス」が引き起こされ、「微小血管障害」が生じることで、歯周病などの糖尿病の合併症の発症や悪化につながると考えられています。

歯周病と糖尿病や肥満との関係については、いままで数多く研究されてきました。その結果、肥満と歯周病の進行度が相関すると報告されました。また、糖尿病に罹患していなくても、高炭水化物食の摂取によって炎症性サイトカインが増加するという報告もあります。しかし、炭水化物の摂取を制限することによる糖質制限によって、歯周病の予防ができるかどうかについては、まだ臨床上のエビデンスが十分に得られているとはいえません。

糖質制限は、糖尿病の予防を介して、間接的に歯周病の予防につながると考えられます。しかし一方で、極端な糖質制限は健康を害する可能性もあります。バランスのとれた食事を心がけることが重要です。

歯周病の原因となる細菌の表記はどう使い分ける?

歯周病の原因となる細菌の表記には、「歯周病原菌」「歯周病細菌」「歯周病原細菌」「歯周病原性細菌」「歯周病関連細菌」など、似ていますが、使い方に違いはあるのでしょうか? また、英語ではどのような表記になりますか?

ある程度の使い分けはありますが、厳密には区別されていないようです。

歯周病の原因となる細菌の表記にはさまざまな用語が使用されています。

日本歯周病学会編『歯周病学用語集第2版』では、教育・論文執筆・学会誌投稿などの際に第一選択肢として使用する用語として「歯周病原細菌」が選定されており、同義語として「歯周病原性細菌」「歯周病原菌」「歯周病細菌」が、類義語・関連語として「歯周病関連細菌」が挙げられています。

一方、日本細菌学会用語委員会編『微生物用語集 英和・和英』では、「歯周病原菌」と「歯周病原性細菌」が掲載されています。こちらには、「歯周病原細菌」は掲載されておらず、学会によって相違があるようです。

上記の2つの用語集から総合的に判断すると、「歯周病原細菌」「歯周病原性細菌」「歯周病原菌」および「歯周病細菌」はほぼ同じ意味で使われているものと思われます。また、「歯周病関連細菌」は、歯周病と関連はあるもののその病原性についての確信が弱いと著者が考える場合に使われるようです。ただし、実際には、厳密に区別されずに使われていることも多いと思われます。

英語表記については両者とも「periodontopathic bacteria」と記載されています(単数形はperiodontopathic bacterium)。しかし、国際雑誌に掲載された論文には、「periodontal bacteria」「periodontal pathogens」などの表記もみられます。

 

妊娠中の歯肉出血は防ぎようがない?

「歯ぐきからの出血が増えたのですが、このまま悪くなってしまうのでしょうか?」と質問を受けました。妊娠中はしかたないのでしょうか?

セルフケアと歯周治療で悪化を防ぐことができます。

妊娠中は、女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンの分泌が増加するため、歯肉の発赤や腫脹が起こりやすくなるとともに、ある種の歯周病原細菌の増殖が促進されます。さらに、つわりによってブラッシングが困難になったり、食事回数や嗜好の変化が起こったりすることで、プラークの蓄積が進み、歯肉の出血が起こりやすくなります。

これらの症状は、出産後、ホルモンバランスが落ち着くと改善するものです。また、中等度~重度歯肉炎に罹患した妊婦さんに対して、個別に立案された口腔衛生指導と歯肉縁上縁下の歯石除去を行ったところ、歯肉炎や歯肉ポケットの改善が認められたという報告もあり、悪化は防ぐことができるといえます。

妊娠期における口腔清掃の重要性を説明し、歯肉の出血は改善できることを伝え、個々に応じたセルフケアの方法を学習しましょう。また、必要であれば、母体にストレスがかからないように注意しながら、安定期である妊娠中期(16~27週)に歯周治療を行うことも可能です。しかし、できれば妊娠前から口腔環境を良好に保つためのセルフケアに留意し、定期的な歯科受診を継続することの重要性を学びましょう。