小児で、全顎的に歯頚部の黒い沈着物を認めます。う蝕はありません。お茶はよく飲ませているようですが、飲食物が原因とは考えにくいです。着色の原因と、その為害性について知りたいです。
Black stainと呼ばれる色素沈着で、審美性以外の問題は特にありません。
各国で小児の約2~20%にみられると報告されている“Black stain“と呼ばれる色素沈着の一種です。 Black stainの沈着メカニズムは完全には解明されていないものの、口腔細菌や唾液性状が関与していると考えられており、黒い色は細菌により産生された硫化鉄に由来するとされています。
Black stainがみられる小児では、プラークや唾液中の色素産生能をもつActinomyces属菌やPrevotella属菌の比率が高いことがわかっています。この小児も う蝕はないとのことですから、う蝕に関連する菌よりもこれらの細菌が優勢なのかもしれません。う蝕が少ないというのはBlack stainがみられる小児の特徴です。
Black stainがみられる小児では、唾液中のカルシウムやリンの濃度、唾液緩衝能が高いことも報告されており、このような細菌叢と唾液の特性が、「う蝕が少ない」という傾向に寄与するのではないかと推測されています。
Black stainは、成長するにつれて自然に消失することがほとんどです。口腔疾患を引き起こすことはありませんが、審美的な問題はあります。セルフケアのみでの除去は困難ですので、定期的に専門的機械的清掃を続けてください。
日本口腔インプラント学会認定専門医 みしま歯科医院 三嶋直之