代表的な摂食障害として、神経性食欲不振症(拒食症)や神経性過食症(過食症)が挙げられます。
代表的な摂食障害として、神経性食欲不振症(拒食症)や神経性過食症(過食症)が挙げられます。拒食症は思春期や若い女性に多く、歪んだボディーイメージや過度の食事制限の結果引き起こされる過大な体重減少が特徴です。食事を制限するタイプとこれに過食と排出行動(嘔吐など)をともなう夕イプに分類されます。過食症は過食と排出行動が特徴ですが、拒食症と違ってやせには至りません。
嘔吐をともなう摂食障害の人に見られるもっとも一般的な症状は、酸蝕症です。口腔内に逆流した胃酸を含む内容物により歯のエナメル質の脱灰を生じるため、飲食物による酸蝕症とは発症部位がやや異なります。主に、歯の舌・口蓋側と咬合面(早期には上顎口蓋側と咬合面)に認められます。ただし、カロリー摂取量を抑えるために、柑橘系の果物を過度に食べている摂食障害の人では、酸蝕症が唇側や頬側に多かったという報告もあります。
また、繰り返す嘔吐や過度な食事制限によって唾液分泌が低下すると、唇が乾燥してひび割れたり、口腔内の灼熱感(特に舌)があったり、耳下腺の肥大などが起こったりします。その他には、過度な食事制限を行う人では、ビタミンC欠乏による歯周疾患増悪の可能性が指摘されたり、嘔吐を繰り返す人では、顎関節への負担過重による筋肉痛が報告されたりしています。
摂食障害とう蝕の関連については、多くの研究において報告されていますが、一方で対照群と比べて差はなかったという報告もあり、現状でははっきりしたことは言えません。
日本口腔インプラント学会認定専門医 みしま歯科医院 三嶋直之