Q;チーズにはう蝕予防効果がある?
A:チーズに含まれる成分により、一時的に、う蝕のできにくい口腔内環境となることがわかっています。
チーズのう蝕予防効果は古くから言われています。その理由として、まず唾液の流量が増えることで唾液の持つ緩衝能が高まり、プラーク中の酸が中和されることが挙げられます。なぜ唾液流量が増えるのかについては、チーズそのものに唾液を増やす効果があるわけではなく、固形物を咀嚼した結果であると考えるのが妥当のようです。
次に、チーズに含まれるカルシウムとリン酸が、脱灰した歯面の再石灰化に関与すると考えられます。また、チーズに含まれる脂肪成分がミュータンス菌の増殖を抑制するとも言われていますが、この点については明確な証拠は得られていないようです。
以上のようなチーズの作用を考えると、学生を対象に、10%ショ糖溶液で洗口させた後に10gのチーズを食べさせ、その後の唾液の酸性度(pH)やカルシウム濃度を測定しました。その結果、ショ糖で洗口する前はpH7.45だった唾液が、洗口した直後はpHがやや下がり酸性に近づきました。ところが、チーズを食べた10分後にはpH8.0近くまで上昇しました。さらに、唾液中カルシウム濃度は、チーズを食べてから60分経過した時点では約4倍に増えていました。
では、「チーズにはう蝕予防効果があると言えるのか」となると話は変わります。前述した通り、チ一ズにより口腔の環境が変わる可能性はあります。しかし、ヒトを対象とした疫学研究で、「チーズを食べる習慣のある人が、食べる習慣のない人と比べて、う蝕の増加が抑えられる」とまでは明快に証明できていないのです。思い通りにはいかないものです。
というわけで、「甘いものを食べた後にチーズを食べると、う蝕を作りやすい口腔環境が1時間程度は抑えられるかな」というのが結論でしょう。う蝕の予防にはいろいろな方法がありますから、チーズも含めて、多方面から取り組んでください。
日本口腔インプラント学会認定専門医 岩見沢市 みしま歯科医院 三嶋直之