☆ビタミンDと歯周病・インプラント治療の関係について
☆ビタミンDの主な作用と歯周・インプラント領域での意義
ビタミンDの作用としては以下の点が特に注目されています。
- 抗炎症作用
- 抗菌防御の強化
- カルシウム代謝を介した歯槽骨吸収の抑制
これらの生理作用を通じて、ビタミンDは歯周組織の維持やインプラント治療の安定性に寄与する可能性があります。
☆臨床研究のエビデンス
- 歯周病との関連
2023年のメタアナリシス(Liang F, Zhou Y, Zhang Z, Zhang Z, Shen J. Association of vitamin D in individuals with periodontitis: an updated systematic review and meta-analysis, 2023)では、歯周病患者は健常者に比べて血清ビタミンD濃度が有意に低いことが示されました。
さらに、SRPにビタミンD補充を併用すると、臨床的アタッチメントレベル(CAL)の改善が有意に大きいという結果が得られています。
- インプラントの初期成功との関連
2018年の後ろ向き研究(Mangano F. et al., J Dent Res Dent Clin Dent Prospects, 2018)では、統計的な有意差は得られなかったものの、ビタミンDレベルが低下するにつれてインプラント埋入後4ヶ月以内の初期失敗率が上昇する傾向が確認されました。
- 重度欠乏(<10 ng/mL)群:11.1% の失敗率
- 不足(10–30 ng/mL)群:4.4%
- 充足(>30 ng/mL)群:2.9%
つまり、重度欠乏群の失敗率は充足群の約4倍に達します。
☆ビタミンD欠乏が生じやすい人
ビタミンDは主に日光曝露と食事から得られます。そのため、以下のような条件に当てはまる人では欠乏のリスクが高まります。
- 日光曝露が少ない・生成効率が低い人
- 屋内勤務や外出が少ない人
- 冬季や日照時間の短い地域に居住(例:北海道の冬)
- 肌の色が濃い人(紫外線吸収効率が低い)
- 高齢者(皮膚での合成能・活動量の低下)
- ホルモン・生理的変化の影響を受ける女性
- 閉経後女性(骨量減少・歯周病リスク上昇)
- 妊婦(歯周病・早産・低出生体重児リスク増加)
- 授乳中女性(ビタミンD需要の増大)
- 全身疾患のある人
- 糖尿病、心血管疾患、慢性炎症性疾患
- 骨粗鬆症や骨量減少
- 腎疾患・肝疾患・消化器疾患(活性化・吸収障害)
- 栄養摂取が不十分な人
- 食事からの摂取量が少ない、または栄養状態が悪い人
☆サプリメント摂取の考え方と注意点
上記の要因に複数該当する患者に対しては、1日あたり1000〜2000 IUのビタミンDサプリメントを勧めても良いのではないかと考えています。低いリスクに比べて得られるメリットが大きいように思えるからです。ただし、過剰摂取には注意が必要です。ビタミンDの過剰摂取(高ビタミンD血症)は、逆にインプラント失敗や骨吸収と関連するという報告(Cheng et al., 2024)もあります。しかし、1日1000〜2000 IUの範囲であればハイパービタミンDになるリスクは非常に低いと考えられます。
☆まとめ
現時点では、血清ビタミンD濃度が高い人ほど歯周病が軽度で、インプラント成功率が高いと断定できるほどの強いエビデンスはありません。しかし、そのような傾向を示す研究は着実に増えています。ビタミンD欠乏が疑われる患者では、リスクとベネフィットを比較したうえで、適度なサプリメント摂取を推奨する価値は十分にあると考えられます。当院では高純度サプリメント「ビタミンD&オメガ-3-Wakasapri for Pro.」を販売しております。
日本口腔インプラント学会認定専門医 岩見沢市 みしま歯科医院 三嶋直之