Q;デンタルフロスと歯間ブラシはどちらが効果的?
A:プラーク除去に関してはエビデンスが不確かですが、歯肉炎の予防に関しては歯間ブラシのほうが有効だとされています
家庭でブラッシングをするとき、歯ブラシだけよりもデンタルフロスや歯開ブラシを併せて使用することでプラークや歯肉炎を減らすことができるのは周知のことと思います。では、この2つをセルフケアで用いた時の効果の比較をプラーク除去と歯肉炎予防を中心にみてみましょう。
歯ブラシに加えてデンタルフロスや歯間ブラシを使用したときのプラーク除去率を比較したいくつかの研究において、「歯間ブラシのほうがデンタルフロスよりも歯間部のプラーク除去率が統計学的有意に高い」という論文が発表されています。しかし、さまざまな論文のデータをくまなく評価し分析したコクランレビューによると、1ヵ月後における群間比較研究では、「確かに歯間ブラシ群のほうがデンタルフロス群よりもプラーク除去効果が高いというエビデンスが認められたが、同-の患者の口腔内を分けて2群を比較したスプリットマウス研究の結果では、ほとんど差はなかった」とされています。また、3ヵ月後においても、プラーク除去率にはほとんど差が認められなかったようです。
歯肉炎予防に関しては、歯肉炎指数と出血部位において、「デンタルフロスに比べて歯間ブラシのほうが両方とも有意に減少させ、効果的である」というエビデンスが認められました。しかし、歯周ポケット深さの変化については、効果に差があるというエビデンスは認められませんでした。
為害イ乍用について検討した結果、臨床的な問題はほとんど発生しなかったようです。なお、歯間部う蝕、口臭や費用について比較した研究は見つからなかったとされていました。
結論として、デンタルフロスと歯間ブラシを比較した結果、プラーク除去に関してのエビデンスは不確かでしたが、歯肉炎の減少に関しては歯間ブラシのほうが有効でした。プラーク除去は確かに重要ですが、その目的はあくまで歯肉の炎症を抑えることだと思います。歯ブラシだけのブラッシングに追加して行うなら、デンタルフロスよりも歯間ブラシのほうが有効であろうと考えられます。
日本口腔インプラント学会認定専門医 岩見沢市 みしま歯科医院 三嶋直之