Q;小児へのデンタルフロスは必要?
A:家庭でのフロッシングがう蝕予防に効果的だというエビデンスはありません。無理のない範囲での指導でよいでしょう。
わが国では、平成時代の間に小児におけるう蝕罹患率と一人当たりのう蝕本数がともにかなり減少し、カリェスフリーも増えていますが、だからといってう蝕予防のための努力を怠れば、う蝕が発症する可能性はあります。しかしながら、特に小児においてはまだ自身でのケアが難しく、忙しい保護者が担う必要がありますので、効率的なう蝕予防法の取捨選択が望まれるでしょう。そのような状況で、小児におけるフロッシングは手技が難しく、継続が困難なため、デンタルフロスを止めてもいいかとの質問と思われます。以下に、小児のフロッシングのエビデンスを説明していきます。
歯ブラシだけでは歯間部のプラークが残りやすいため、隣接面う蝕の予防のためにデンタルフロスの使用されていると思います。しかし、さまざまな論文のデータを検討したコクランレビューによると、ブラッシング時にフロッシングを追加しても、プラーク除去効果はほとんど増加しないとのエビデンスが示されました。さらに残念なことに、セルフケアや3ヵ月ごとに専門家が行うフロッシングによる隣接面のう蝕予防効果のエビデンスレベルも低く「ほとんど意味がないのではないか」と示され、アメリカでも話題となりました。このレビューでは、学校で毎日専門的なフロッシングをした場合にのみ、う蝕予防の効果が認められたとされています。また、フッ化物の使用によってデンタルフロスの必要性が駆逐されるだろうと述べられているのも興味深いところです。
ブラッシングも、単なる機械的清掃によるう蝕予防の効果は疑問視されています。近年欧米では、フッ化物配合歯磨剤を使ったブラッシングこそが推奨されています。コクランレビューなどにおいて、う蝕予防の項目でフロッシングにはほとんど触れられていないため、欧米においても優先度は低いものと考えられます。しかしながら、フロッシングには歯肉炎の予防効果はあると思われます。そのため、将来的なことを考えれば、無理のない範囲で可能なかぎりは、フロツシングもしておくべきでしょう。
私の個人的にはフロッシングは患者さん推奨しています。しかし、前歯の差し歯(補綴物の場合)歯茎の保護の観点から使用しない指導をする場合もあります。
日本口腔インプラント学会認定専門医 岩見沢市 みしま歯科医院 三嶋直之