Q;歯肉マッサージの臨床的効果は?
A:歯ブラシを用いた歯肉マッサージを行った場合、BOPの減少が期待されると考えられます。
歯肉マッサージによって期待される臨床的効果は、歯肉からの出血、つまり“プロービング時の出血(BOP)の減少”です。この場合の歯肉マッサージとは、歯ブラシを用いたものを指します.機序は、ブラッシングの刺激で歯肉組織中の細胞活性が高まり、破壊された歯周ポケット内の内縁上皮がいち早く修復され、そこから漏出する血液が減るためと考えられています。
また、代表的な歯周病原因菌であるporphyromonas gingivalisの培養には血液成分が必要です。これはp.gingivalisが血液中の鉄を必要とする細菌であるからです。つまり、BOPが減少している状態は、栄養源である鉄(=血液)が足りない状態とも言え、歯周病菌が歯周ポケット内で棲息しづらい環境になるということです。このことからBOPを減少させることは、歯周病菌をコントロールするという意味においても重要です。
ブラッシングには、①プラークを除去する、②歯肉をマッサージするという2つの目的があります。しかし、①の目的があまりにも強調されすぎたため、歯肉マッサージの効果についての臨床研究はほとんどされておらず、歯肉マッサージを1日何回、何分間、どのような方法で行えばよいのか、などといった明確なエビデンスはまだありません。したがって、繰り返しになりますが、「期待できる臨床的効果は、BOPの減少」という表現に留めざるを得ません。
一方、指でのマッサージについてはどうでしょうか。“指でのマッサージだけ”ではBOPの減少の効果は認められませんでしたが、メインテナンス患者における臨床上の効果についてや、PMTCと併用する場合の効果は不明です。
近年では、リラクゼーション、すなわち指で歯肉をマッサ一ジして気持ちよさを提供する歯科医院がみられます。医療の範躊とは考えにくいのですが、広い意味での第一次予防(=健康増進)なのかもしれません。エビデンスの蓄積を待つところです。