Q;はちみつやメープルシロップもう蝕の原因になる?
A:はちみつはブドウ糖と果糖が主成分のため、砂糖に比べればう蝕になりにくいかもしれません。メープルシロップは砂糖と変わりません。
砂糖がう蝕の原因と言われる理由は主に2つです。ひとつは、う蝕菌であるミュータンスレンサ球菌が砂糖から「不溶性グルカン」という水に溶けない粘着性の多糖体を産生し、歯面のプラーク形成に重要な役割を果たすことです。多くの糖類の中で、不溶性グルカン合成の原料になるのは砂糖だけです。もうひとつは、代謝してう蝕菌を含めたさまざまな口腔内の細菌が酸を産生し、歯の脱灰を起こすことです。この場合は、砂糖以外の糖からも酸は産生されます。
それでは、はちみつやメープルシロツプの中身はなんでしょうか。文部科学省の食品成分データベースによると、ともに炭水化物(糖質)が主成分であることは砂糖と同じです。しかし、糖質の種類をみると、はちみつは「ブドウ糖」と「果糖」が主成分で、「砂糖」の存在はほんのわずかです。ブドウ糖と果糖からはう蝕菌による不溶性グルカンの産生はされないため、はちみつを食べてもプラークが形成されにくいということになります。しかし、多くの口腔内の細菌はブドウ糖と果糖から酸を産生するため、はちみつの過剰摂取はう蝕を誘発する可能性があります。また、ある種のはちみつ(マヌカハニー)にはう蝕菌を含め口腔細菌に対して抗菌作用があることが報告されており、砂糖に比べるとう蝕になりにくいと考えられます。一方、メープルシロツプに含まれている炭水化物の主成分は砂糖なので、う蝕の誘発効果は砂糖と変わらないでしょう。
炭水化物の他に、はちみつとメープルシロップにはポリフェノールが含まれており、その健康効果が報告されています。すでに、茶ポリフェノールに関しては、ミュータンスレンサ球菌の不溶性グルカン合成を阻害することによりう蝕発生を抑制することがわかっています。はちみつやメープルシロップのポリフェノールも、将来研究が進んでう蝕抑制効果が明らかになるかもしれません。
日本口腔インプラント学会認定専門医 岩見沢市 みしま歯科医院 三嶋直之