Q;乳酸菌タブレットとキシリトールとの違いは?
A:乳酸菌は、ミュータンス菌の増殖を抑制し、キシリトールは、酸を作るなどのミュータンス菌の活勣を弱めるという違いがあります。
う蝕予防のために摂る乳酸菌タブレットには、ミュータンス菌の増殖を抑える乳酸菌が入っています。キシリトールとの違いはその作用機序です。
キシリトールは、ミュータンス菌が分解できないため、摂ることで菌による酸の産生が抑えられます。また、栄養源にもならないため、ミュータンス菌自体の活動も弱められます。―方、乳酸菌は、酸やバクテリオシン(類縁菌に対して抗菌活性をもつタンパク質やペプチド)を産生することによってミュータンス菌の増殖を抑制し、う蝕になりにくい口腔環境を作ると考えられています。
ブラッシングが十分にできていれば、就寝前のブラッシング後に乳酸菌夕ブレットを食べてもう蝕にならないと考えられます。その理由の1つ目は、乳酸菌が作用するのは基本的にタブレットを紙めている間であり、長時間にわたって口腔内が酸性の状態にはならないからです。デンタルプラーク形成過程で取り込まれた一部の乳酸菌は長くは生きられず、他の菌と相互作用しながら徐々に消滅していきます。すでにできあがった口腔フローラ(口腔内に棲息する細菌の集団)に外から新たに乳酸菌が入ってきても、なかなか定着することはできないのです。
2つ目は、乳酸菌タブレットには甘味料としてシヨ糖が使用されていないからです。シヨ糖の代わりにキシリトールが使用されていることがほとんどです。そのため、就寝中にミュータンス菌や乳酸菌による酸産生が促進されることはありません。
ただし、乳酸菌タブレットのう蝕予防効果とう蝕発生リスクに関する研究はキシリトールに比べて歴史が浅く、症例数も多くありません。特に唾液緩衝能が低い症例における影響については、さらなる研究が必要と思われます。
日本口腔インプラント学会認定専門医 岩見沢市 みしま歯科医院 三嶋直之