Q;歯牙破折とクレンチングの関連性は?
A:咬合性外傷の一例である覚醒時ブラキシズムのクレンチングは垂直歯根破折と関連があると考えられています。
2018年のブラキシズムのコンセンサスレポートでは、「ブラキシズムは反復性咀嚼筋活動のことを示し、睡眠時ブラキシズム(Sleep Bruxism :SB)と覚醒時ブラキシズム(Awake Bruxism: AB)に分類される」と定義されました。 ABは「クレンチング」「くいしばり」と表現され、今回の質問はこれに当てはまります。
永久歯の歯牙破折には、①外傷により生じ、一般に前歯部に起こる「水平歯根破折」、②外傷性咬合等により生じ、前歯部と臼歯部の両方で起こる「垂直歯根破折」の2種類があります。 したがって、咬合性外傷の一例であるABのクレンチングは垂直歯根破折と関連があると考えられています。
臨床上の注意点として、AB患者のなかで「くいしばり」のイメージは最大咬合力の70~80%程度と認識されており、本人にくいしばりの自覚がないことが多いと報告されています。現実には、その1/4程度の力で上下の歯が接触している状態であることが多く、接触が長時間・反復的に行われている状態を歯牙接触癖(Tooth Contacting Habit : TCH)と定義しています.ナイトガード等の口腔内装置は覚醒時の装着が難しくABには効果的ではないと考えられ、SBに使用されることが多いです。
歯科従事者ができる対応としては、まずTCHの早期発見です。通常、上下の歯にはわずかな隙間(安静空隙)があるため、「上下の歯を少し離して隙間を作ってください」と指示した際、その状態を不快に感じる方はTCHであることが多いです。また「普段口を閉じている時、上下の歯は触れていますか?」等の質問でもスクリーニングが可能です。
TCHへの対応としては、行動変容法(動機づけ・意識づけ)、姿勢・口呼吸の改善等が有効だと考えられています。スマートフォン操作やデスクワークで誘発される「頭部前突・肩甲骨前傾外転姿勢(Forward Head Posture and Rounded Shoulders: FHPRS)」は、咬合を変化させ、安静空隙の消失・臼歯部接触の増加を惹起すると報告されています。口呼吸は下顎位の変化を誘発し、FHPRSにつながる可能性が報告されているため、耳鼻科の受診を促すことも効果的です。また、垂直歯根破折は歯内治療経験歯に多発することから、う蝕予防も効果的と考えられます。
日本口腔インプラント学会認定専門医 岩見沢市 みしま歯科医院 三嶋直之