Q:口内炎はどうせ治るから放っておけばいい。
こういうかたが多いんで困るんですよねえ。粘膜の病気には、口腔がんも含まれるということを、ぜひ知っていていただきたいですね。
1ヵ月も治らないなんて、口内炎にしては治りが遅いと思いますよ。だって、口のなかの粘膜の細胞は、だいたい2週間もあればすっかり新しいものと入れ替わりますからね。みなさんが口内炎と呼んでいるアフタ性潰瘍なら、1週間もすれば治ってきて、つらい痛みが落ち着くのがふつうですから。
粘膜の病気の治療法としては、アフタ性潰瘍で痛いなら、ステロイド軟膏を塗れば治ります。カンジダ症ならば、抗真菌薬を塗れば治ります。アフタに似て口の周りにポツポツとできる口唇ヘルペスも痛いですが、抗ヘルペスウイルスの飲み薬や軟膏が効きます。
帯状庖疹が口のなかに出ることもあります。上あごの裏の奥の左端や右端から線状に並んでポツポツ出て、これはものすごく痛いです。帯状庖疹が出たら早いうちに皮膚科や口腔外科で診てもらいましよう。
ところが、こうした治療を受けても治らないのが口腔がんです。口腔がんは、無痛性の場合が多いです。進行しないと痛みが出ず、患者さんが油断しやすいのが困ったところです。
また白板症といって、粘膜が白い板のように浮き上がって見える前がん病変がありますが、これも通常は痛みがないので、うっかりと見逃されがちなんです。
正確な診断を受けるには、口腔外科で組織検査を受ける必要があります。がんのなかには一見アフタ性潰瘍に似ているものもあるので、しろうと判断はとても危険です。
口内炎が1週間たってもちっともよくならない、というようなことがあったら、念のために口腔外科を受診し、検査を受けることをおすすめします。
小さな前がん病変なら、「がんになる前に」と、組織検査の際に切除してもらえることもあります。検査を受けて、口腔がんを見逃さないようにしましよう。
日本口腔インプラント学会認定専門医 岩見沢市 みしま歯科医院 三嶋直之