Q:歯ブラシは硬い毛のほうがしっかりみがける。
このかたのおっしやること、乱暴なようでいて、じつは一面正しいです。広い歯面のプラークを効率よく取るには、軟毛やテーパード毛ではたしかに不利。まどろっこしいと感じるのは、無理もありません。ただ、硬い歯ブラシでゴシゴシすると、歯ぐきが痩せエナメル質より一段やわらかい象牙質が出て、これを削ってしまわないか心配です。理想的な歯ブラシ圧は150~200g。台所用のハカリなどで試すと案外軽いタッチですよ。それに硬い歯ブラシは、歯と歯のあいだや歯と歯ぐきのさかい目の掃除がしにくいでしょう? このへんはとくにむし歯や歯周病のリスクが高いところ。ツルツルした歯面はもともとプラークが溜まりにくく、むし歯のリスクの低い場所なのに対し、歯と歯のあいだや歯と歯ぐきとのさかい目は歯ブラシが届きにくくプラークも溜まりやすいのです。歯ブラシを選ぶなら、ここのお掃除に少しでも有利なものがおすすめなんですよ。
それでは、どんな硬さの歯ブラシがいいのか? 歯科衛生士さんによる実験結果をお教えしましょう。5社のさまざまなタイプの歯ブラシ26本を比較した結果、いちばん歯と歯のあいだをきれいにできたのは、フラットタイプのミディアムソフトでした。同タイプ内で比較すると、全体的にソフトやハードよりミディアム(あるいはミディアムソフト)の毛質がプラークの除去に有利という結果でした。
ただし、歯ブラシで歯と歯のあいだがどの程度きれいになったと思います? ショックをうけないでくださいね。優秀な歯ブラシでも約6割のプラーク除去率にとどまりました。頬側と舌側の両面から15秒間みがいた結果がこれです。
ですから歯周病で血が出るなどの問題がないなら、できればミディアムの毛質でみがき、フロスか歯間ブラシもぜひ使ってください。この場合、歯科衛生士さんに選んでもらうのがいちばん。もちろんフッ素(フッ化物)配合歯みがき剤も忘れずに。
日本口腔インプラント学会認定専門医 岩見沢市 みしま歯科医院 三嶋直之