ブラッシングには、歯肉を物理的に刺激するマッサージ作用も期待されると言われています。実際、歯周病の予防や治療に、どの程度の効果や意義があるのでしょうか?
物理的刺激による歯周ポケットの傷の修復、炎症の軽減が期待されます。
歯肉マッサージが歯周局所にどのように影響するのかについては、動物実験でいくつか確認されています。
まず、歯肉の外縁上皮が直接歯ブラシで刺激され角化か亢進することで、細菌が外縁上皮の表層を通過しにくい状態になります。細菌に対する防御機能が充進すると考えでよいでしょう。
次に、歯肉の外側からの刺激で、接合上皮細胞や結合組織中の線維芽細胞が間接的に物理的刺激を受ける結果、これらの細胞の増殖活性が高まることが確認されています。歯周病患者の歯周ポケット内では、内縁上皮が破壊され、傷や潰瘍ができています。歯肉マッサージによって内縁上皮の細胞や線維芽細胞が増殖し、その傷が修復されると期待できるのです。また、酸素飽
和度や血流量が高まり、炎症が軽減することは、動物のみならずヒトを使った実験でも確認されています。
臨床研究でも、物理的刺激の弱いデンタルフロスよりも、歯間ブラシを使った場合の方が、歯周炎の軽減が著しいと報告されています。刺激によって歯周組織が“強くなったと考えられます。
ブラッシングでは歯肉マッサージをしながら同時に、プラークを除去します。そのため、マッサージ効果とプラーク除去効果についてそれぞれを独立で評価するのは難しいです。とはいえ、どちらの効果もブラッシングの重要な役割です。ブラッシングでは、「細菌の除去」がとかく注目されやすいのですが、「マッサージ効果」も忘れずに覚えておいてください。
日本口腔インプラント学会認定専門医 みしま歯科医院 三嶋直之