加齢による3つの変化により歯周組織の炎症が起こりやすくなります。
80歳を超えると、それまで安定していた部位に、歯周炎の進行や再発を認めることがあります。加齢は、どのような機序で歯周組織に影響を与えるのでしょうか?
加齢による3つの変化により歯周組織の炎症が起こりやすくなります。
高齢者の歯周病では、生活習慣の経年的な蓄積や基礎疾患の影響が大きくなることに加えて、加齢にともなう3つの変化により、歯周病菌に対する歯周組織の炎症が起こりやすくなると考えられています。
1つめは、免疫機能の低下です。免疫系細胞のなかで中心的役割を果たすT細胞は胸腺で育ちます。胸腺は加齢とともに小さくなるため、血中における新たなT細胞の数の減少や機能低下につながり、免疫力が落ちます。
2つめは、細胞の老化です。実験的に老化させたヒト細胞を用いた研究では、老化歯肉線維芽細胞は、若い細胞に比べて、歯周病菌の内毒素の刺激に対する応答性が高く、歯周組織の破壊に関与する炎症性物質を多く産生することが報告されています。
3つめは血管の変化です。動脈の加齢変化である内膜肥厚は、歯周組織の栄養血管である下歯槽動脈でも起こります。これは、歯周組織の血行障害を引き起こし、自然治癒力や感染抵抗性を低下させる可能性があります。
高齢者の歯周メインテナンスでは、良好な口腔環境の維持に加えて、全身状態や上記の加齢による変化も考慮しながら、治療計画を立てることが重要です。
日本口腔インプラント学会認定専門医 みしま歯科医院 三嶋直之