「歯磨き剤の研磨剤が歯を削ると聞いたから、使いたくない」と言われてしまいました。実際、どうなのでしょうか?
健康障害が出るほど歯面が削られることはありません。
歯磨剤中の清掃剤(研磨剤)には、リン酸水素カルシウム、水酸化アルミニウム、無水ケイ酸などが用いられています。実験してみれば、たしかに清掃剤は歯面を削りますが。一生涯使用しても健康障害が出るほど削れることはありません。それよりも、歯ブラシの毛の硬さやブラッシング圧のほうが研磨性に影響します。
歯磨剤の歯面研磨性は、RDA(Radioactive Dentin Abrasion)という象牙質研磨力の評価値によって、世界的には250以下と基準化されており、日本では150以下と世界基準より低く設定されています。ただしRDAの測定は、決められた歯ブラシを用いて基準化された力でどのくらい象牙質が削られるかを示すものです。実際のブラッシングにおいては、硬い毛の歯ブラシで強い力で磨いたり、清掃剤の粒子が硬かったりすると、象牙質のダメージは大きくなります。
日本で販売されている歯磨剤の清掃剤の配合割合は、ペーストタイプの歯磨剤では10~60%ですが、現在の製品の配合量は以前より少なく、研磨性が低く抑えられています。清掃剤無配合のシェルタイプや泡タイプ、あるいは低研磨性のソフトペーストタイプの歯磨剤は、歯根露出や知覚過敏などで歯面への刺激を抑えたい患者さんに利用できます。
日本口腔インプラント学会認定専門医 みしま歯科医院 三嶋直之