炭水化物の摂取を制限する糖質制限は、う蝕だけでなく歯周病の予防にも有効であるという話を聞きましたが、なぜでしょうか? 歯周病の予防のため、糖質制限を指導するべきですか?
糖質制限は、糖尿病の予防を介して、間接的に歯周病予防につながると考えられます。
炭水化物の過剰摂取によって、血液中に糖質が過剰に存在する「高血糖」状態になると、終末糖化産物(AGEs)が血中で増加します。このAGEsが毛細血管の内皮細胞に存在するレセプターと結合すると、NADPHオキシダーゼを活性化し、活性酸素種が過剰に発生します。その結果として「酸化ストレス」が引き起こされ、「微小血管障害」が生じることで、歯周病などの糖尿病の合併症の発症や悪化につながると考えられています。
歯周病と糖尿病や肥満との関係については、いままで数多く研究されてきました。その結果、肥満と歯周病の進行度が相関すると報告されました。また、糖尿病に罹患していなくても、高炭水化物食の摂取によって炎症性サイトカインが増加するという報告もあります。しかし、炭水化物の摂取を制限することによる糖質制限によって、歯周病の予防ができるかどうかについては、まだ臨床上のエビデンスが十分に得られているとはいえません。
糖質制限は、糖尿病の予防を介して、間接的に歯周病の予防につながると考えられます。しかし一方で、極端な糖質制限は健康を害する可能性もあります。バランスのとれた食事を心がけることが重要です。
日本口腔インプラント学会認定専門医 みしま歯科医院 三嶋直之