「メディアで、食後すぐの歯磨きは歯の健康によくないので30分空けたほうがよいと言われていますが、学校給食後の歯磨きは止めたほうがよいですか?」という質問を受けました。どう答えればよいでしょうか?
学校全体で昼食後のブラッシングを中止する必要はありません。
学校現場で「食後30分以内に歯を磨かない」ことを推奨する必要はありません。このようなことが話題になっている理由は、「酸性食品」の摂取後にブラッシングすると歯がすり減ってしまう「酸蝕症」の危険性が高まる可能性のあることが、欧米を中心に報告されているからです。マスコミなどで報道された際に、「酸性食品」がいつの間にか「食事」にすり替わっていると推測されます。実際、2011年にイギリスで出版された酸蝕症の教科書「Dental Erosion」では「一般に、食後すぐに歯を磨くべきである」と注意されています。また、酸性食品摂取直後のブラッシングと酸蝕症との関連についても報告が少なく、「関連があった」とする報告と「なかった」とする報告があります。
さらに、日本では、欧米に比べてきわめて学齢期の酸蝕症が少なく、中高生で1.1%という報告があります。また、酸蝕症の原因が食後すぐのブラッシングであるかどうかは不明です。今後、日本における酸蝕症の有病率や酸蝕症に関連する要因を明らかにするための調査研究が望まれます。
現段階では、酸蝕症が疑われる児童生徒に対しては、個別の対応をすぺきと思われます。酸蝕症が疑われる児童生徒には、逆流性食道炎、酸性食品摂取、ブラッシング習慣などとの関連を検討し、それぞれ指導を行うことが推奨されます。既出の酸蝕症の教科書にも同様の記載があります。したがって、学校全体で昼食後のブラッシングを中止する必要はありません。
日本口腔インプラント学会認定専門医 みしま歯科医院 三嶋直之