Q:インプラント治療にあたっての留意点は?
・インプラント治療は、歯を失った場合の治療としては第一選択ですが、メンテナンスフリーで入れてしまえば一生安泰といった、夢のような治療法ではありません。
・手術の偶発症や治療の予知性のレベルについても、詳しく説明を受けてください。
・費用やおおよその治療期間についてもしっかり把握していなければいけません。
・インプラント治療の理解と診断
初診でインプラントを希望されている患者さんには、まずはインプラント治療がどういったものなのかを正確に知っていただく必要があります。インプラント以外の治療法と比較したうえでその必要性、優位性をよく理解してください。また、費用やおおよその治療期間についてもしっかり把握していなければいけません。インプラント治療は、歯を失った場合の治療としては第一選択ですが、メンテナンスフリーで入れてしまえば一生安泰、といった夢のような治療法ではありません。ぜひとも手術の偶発症や治療の予知性のレベルについても、この期間に詳しく説明を受けてください。
・治療計画に必要な情報は
インプラント治療を受けるにあたっては、適切な治療計画が重要です。そのためには、口腔情報を総合的に判断していく必要があります。インプラントによってつくられる歯が前歯を含む場合は、そのおおよその見た目を確認する必要があります。すでに骨が失われている場合が多いために、患者さんが期待している完成形と、歯科医師ができるものとに差がある可能性があります。インプラントの上部構造は固定式以外も選べますので、機能と見た目のバランスをよく相談していただく必要があります。特に、骨の状態については、レントゲン写真による診断が重要となりますが、顎の骨のCT撮影を行うことでより正確に骨の幅、厚み、三次元的な位置関係を知ることができます。最近では、CT撮影ができる施設も増えてきており、複雑な手術には不可欠でもあるともいわれています。
治療計画には、インプラント術を行う部位だけでなく、口の中全体の治療も同時に考える必要があります。もしあなたに治療途中の歯、新しい虫歯、詰め物が脱落した歯、歯周病等がありましたら、それらを含めたすべてが治療計画となります。
・虫歯と歯周病があるときのインプラント治療は
虫歯すべてを完治させてからインプラント治療を始めることもありますが、長い期間が必要な場合には、まずインプラントを埋入してしまい、インプラントが定着するまでの時間を利用して他の虫歯を治療していく方法がとられることも多いです。しかしながら歯周病については併行すべきではない、という考えが主流です。 多くの場合、歯周病が治癒しないままインプラント治療を始めるべきではありません。インプラントを埋人しても天然の歯と同様に歯周病と同じ病態が起こることがあります(歯→インプラントとなるため、歯周炎→インプラント周囲炎と呼ばれています)。重度の歯周炎に罹患している口の中の環境では、インプラントもインプラント周囲炎になりやすくなることは容易に想像できると思います。歯周病は、口の中で繁殖する細菌を除去することで治りますが、その方法としては、次の2つが重要といわれています。
(1)自分がブラッシングによって細菌のかたまり(プラーク)を除去できるようになる(良好なプラークコントロール)
(2)定期的に歯科医院で歯石を除去する
・歯周病治療は歯磨き指導から始める
ですから、初診からインプラント治療を始めるまでには、まず歯周病の治療をしていただく必要があります。歯周病治療は歯磨き指導から開始されます。初診の時点で上手に歯磨き=プラークコントロールができている患者さんの場合は、この歯磨き指導にはさほど期間を要しないでしょう。しかしながら、歯磨きに問題がある場合は、改善されるまで歯磨き指導を受けていただく必要があります。「歯磨き」については、歯科医師や歯科衛生士といった歯科医療従事者と、一般の患者さんとの間に認識の違いがあることがあります。一般の患者さんは、「歯磨き」はエチケットとしての口臭予防や自分の不快感の解消を目的とされていることが多いと思います。しかし、歯科医学的には歯磨きを「細菌を物理的に取り除くための手段」と考えています。すなわち、きちんとした歯磨きができるということは口の中の細菌が取り除くことができる、ということです。
日本口腔インプラント学会認定専門医 岩見沢市 みしま歯科医院 三嶋直之