A: 上あごと下あごでは骨の形態や特徴、密度が異なるため、治療の計画や方法が変わります。
☆上あごと下あごの違い
上あごと下あごでインプラント10年経過の生存率(長持ち度)は、従来、上あごより下勿この方が高い傾向でしたが、近年、上下のあごとも高い生存率(約95%前後)が示されています。しかし65歳以上の高齢者ではインプラント喪失リスクが増加するとも報告されています。
〈インプラント治療で考慮すべき上あごと下あごの違い〉
1骨密度の違い
あご骨は、外側が緻密な皮質骨で、内側が血液豊富な網目状の海綿骨で構成されています。一般的に上あごより下あごの方が皮質骨が厚く、上あごの奥歯(臼歯部)の海綿骨は緻密度が低い傾向があります。緻密度が低いとインプラントの固定に影響します。逆に緻密な骨は硬いため、骨を削る時の火傷や血液不足によるインプラントの早期脱落が懸念されます。
2骨の形態的特徴の違い
上あごの奥歯(臼歯部)の上には空洞(上顎洞)が存在するため、骨が不足する場合があります。下あごの奥歯の内側は形状が陥凹しているため、内側(舌側)の骨が制約される場合があります。
3神経・血管の局在の違い
上あごの前歯の真ん中には切歯管が存在し、上顎洞の骨壁には後上歯槽動脈が存在します。下あごの奥歯の骨内に下顎管が存在し。下あごの内側には舌下動脈・オトガイ下動脈が存在します。治療計画立案時には、これらの神経血管への接触を回避した計画を検討します。
日本口腔インプラント学会認定専門医 みしま歯科医院 三嶋直之