A:薬の種類によっては、治療リスクが上昇する、もしくは治療できない場合もあります。
☆注意が必要な疾患と薬
- 骨粗しょう症(一部がんの治療)
治療に使う一部の薬の副昨用から、あごの骨が壊死する病気があります。これを薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)といいます。ポジションペーパー2023では、医科歯科薬科の連携が必要だが、抜歯などの歯科処置一手術前の予防的休薬は不要となっています。注射による加療を受けている場合は、インプラントは非適用となります。
- 高血圧
降圧薬のうち、レニン‐アレジオテンシン系(RA系)に作用する薬であるACE阻害薬、ABB、ARNIは、手術中の低血圧が起こりやすくなるため、添付文書にて「手術前24時間は投与しないことが望ましい」と記載されています。
- チタンアレルギー
インプラント治療は、チタン合金であるインプラント体をあごの骨に埋め込みます。チタンは、アレルギーを起こしにくい金属で、医療分野においてもペースメーカー(人工心臓)、人工関節などの材料としで人体内で使用されています。しかし、まったくアレルギーを起こさない物質でもなく、1,000人にパッチテストを行ったところ、5人(0.5%)にチタンの陽性反応があったという報告もあります。
- 抗うつ薬
骨の代謝や歯周組織の治癒力に影響を与えるため、骨との結合を阻害しインプラントの早期脱落リスクが4倍になると報告されています。
- 鎮痛薬(NSAIDs)
インプラントの骨統合に失敗することは稀ですが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、骨の治癒と修復に重要なプロスタグランジンE₂の合成を阻害する因子となることが示唆されているため、使用の注意が必要です。
- 胃薬
胃の壁細胞に存在し胃酸分泌を促進するヒスタミン受容体を競合的に括抗するH₂ブロッカーは、副反応として稀に血液障害や、歯ぐきからの出血、発熱を起こすため、インプラント手術後の治癒に影響する可能性があります。
- 高用量ステロイド治療
ステロイドのレセプターは全身の臓器に分布しているため、副作用は多岐にわたります。とくに高血糖、高血圧、不整脈の発現や、中長期投与で無菌性骨壊死や骨粗しょう症など、骨に関わる疾患につながるので注意が必要です。
日本口腔インプラント学会認定専門医 みしま歯科医院 三嶋直之