ブラッシングさえすればう蝕を防げるというわけではありません。
う蝕は、う蝕菌が糖質から産生する酸により歯質が脱灰する疾患です。理論的には、もし、歯口清掃により口腔内にう蝕菌が存在しない状態を常時保つことができれば、う蝕は発生しないということになります。しかし、口腔内には歯の深い溝など、歯ブラシの毛先が到達しにくい部分があり、日常のブラッシングでプラークを100%除去することはかなり困難です。実際、ブラッシングによるプラーク除去率は、歯磨剤の使用の有無にかかわらず約50%であると報告されています。
砂糖摂取がう蝕に与える影響は、ブラッシングをすることで若干弱まってもけっしてなくならないことが、いくつかの研究でわかっています。チョコレートなどの甘いものを1日1回以上食べる子どものう蝕になる確率は、ブラッシングの回数が1日2回と1日2回の子どもではほぼ同じでした。また、成人を対象とした研究では、ブラッシングの回数とは独立して、砂糖摂取量
の増加とともにう蝕も増加するという関係が認められると報告されています。
う蝕予防には、細菌、歯質、食物の3つの要因それぞれに応じた予防法を組み合わせて行うことが重要です。患者さんには、ていねいなブラッシングに加えて、フッ化物配合歯磨剤の使用、う蝕を誘発しにくい代用甘味料の利用、定期的な歯科医院での専門的歯面清掃の必要性についてアドバイスをうけてください。
日本口腔インプラント学会認定専門医 みしま歯科医院 三嶋直之