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紅茶に牛乳を入れるとう蝕リスクを下げられる?

う蝕リスクが高く、毎日頻繁に紅茶を摂取する習慣のある方に、紅茶に砂糖を入れないことに加え、牛乳を入れるよう伝えたほうがよいでしょうか? 牛乳の中の乳糖が気になり、迷っています。

う蝕や酸蝕症のリスクをコントロ-ルする工夫の1つとして勧められます。

一般に、紅茶のpHは約5.5といわれており、紅茶の種類によっては酸性度がさらに低いものもあるため(例:アッサムティーはpH 4.9)、頻繁に摂取することは、酸性の食品に由来するいわゆる「酸蝕症」のリスクを上げる可能性があります。

一方、紅茶には、フッ化物やポリフェノールといったう蝕の抑制作用をもつ成分も含まれています。また、牛乳の酸性度は中性領域であり(pH 6.8)、牛乳に含まれるラクトース(乳糖)はう蝕原性が糖類でもっとも低いうえに、牛乳にはカルシウムやリン酸、カゼインなどのう蝕抑制因子も含まれています。さらに最近の報告で、牛乳やヨーグルトは酸蝕症への防御因子としての役割も有することが示唆されています。

このように考えると、ご質問のように、紅茶に砂糖を入れずに牛乳を入れてミルクティーとして飲むことは、う蝕や酸蝕症のリスクをコントロールするくふうの1つとして勧められると思います。ただし、摂取する紅茶の量(牛乳との比率も含め)と頻度が過度になると、エナメル質の臨界pH値である5.5を下回る機会が増えることになるため、リスクが上がり問題になる可能性があります。1日に何杯も飲むといった極端な習慣は、改善してもらうよう指導する必要があると思います。

砂糖の入っていない炭酸水も、歯に悪い?

「砂糖の入っていない炭酸水を飲んでいるけど、これも歯にはよくないんですか?」と聞かれました。どう答えればよいでしょうか?

酸味料が入っていなければ、歯への影響は小さいと考えられます。

飲んでいるのが、純粋な炭酸水であれば、歯への影響は小さいと考えられます。

一般的に原材料が水と二酸化炭素のみの純粋な炭酸水は、pH5程度の弱酸性の飲料です。「酸蝕症」のリスクは飲料のpHと残留飲料が唾液で中和されるまでの時間(緩衝能)に関係します。純粋な炭酸水は、コーラなどの炭酸飲料(pH 2.5~3.0)と比較して酸性度が弱く、また、摂取後は一時的にpHが低下するものの唾液によって短時間(1分以内)でエナメル質の臨界pH値である5.5以上に回復します。このことから、「酸蝕症」のリスクは完全に否定はできませんが、心配するほどではないと考えられます。

ただし、レモンなどの風味づけに酸味料(主にクエン酸)を添加することで、コーラなどの炭酸飲料と同程度の酸性度を示す炭酸水(砂糖なし)もありますので、成分表示を確認するなどの注意が必要です。

また、歯根面の表層を覆うセメント質や象牙質では、臨界pHはエナメル質に比ぺでさらに高くなる(pH 6.7)ことから、歯周病などで歯根面が露出した場合には、より注意を喚起するというように、口腔内の状況に応じた指導が必要となります。

アルカリ性食品は口腔内を酸性にしない?

飲食による口腔内の酸性化がう蝕のリスクにつながると説明した際、「アルカリ性食品だったら口の中は酸性にはならないはずだ」と言われ、説明しきれませんでした。本当にそうなのでしょうか?

アルカリ性食品・酸性食品関係なく、糖を含むものを食べれば口腔内は酸性になります。

酸性食品・アルカリ性食品とは19世紀末に提唱された概念で、体内での栄養素の燃焼を想定し、食品を高温で燃やして生じた灰を溶かした水溶液が酸性であれば酸性食品、アルカリ性であればアルカリ性食品としています。

つまり、食品に含まれる無機陽イオン(ナトリウム、カリウムなど)と無機陰イオン(リン、イオウなど)のバランスで判断され、たとえば、無機陽イオンをより多く含む海藻やお酢はアルカリ性食品に、無機陰イオンをより多く含む肉類や卵は酸性食品に分類されます。

口腔内の環境は唾液の影響を強く受け、pHは6.8~7.2の中性領域に保たれています。食品中の無機イオンが口腔内で唾液に完全に溶出することはなく、その量は微量であることから、食品中の無機イオンによって、口腔内のpHが大きく変化する可能性は低いです。一方、食品自体の酸性度は口腔内に影響を及ぼします。炭酸水や果汁ジュースなど、エナメル質の臨界pHを下回る食品を頻回に摂取すると、細菌由来の酸によらないエナメル質の脱灰を引き起こし、歯の酸蝕症の原因となります。さらに、う蝕に関連する食品側の因子としては、食品中の糖の量と種類、口腔内の停滞性、摂取頻度が挙げられます。甘味菓子など、砂糖(ショ糖)を多く含み、口腔内に残りやすい食品を頻繁に口にすると、う蝕のリスクは高くなります。

以上のことから、説明では、お酢などを例に挙げてアルカリ仕食品と食品自体のpHは一致しないこと、また、口腔の健康には食品自体のpHや糖の含有および性状の影響が大きい点が、ポイントとなると思われます。

科学的根拠のある歯周病予防目的の食品は存在する?

注目される健康食品で、う蝕予防をうたったものはよく見かけるのですが、歯周病予防をうたった食品は少ないように思います。科学的な根拠がある歯周病予防を目的とした食品には、どんなものがあるのでしょうか?

特定保健用食品や機能性表示食品に歯ぐきを健康に保つことをうたったものが存在します。

いわゆる「健康食品」のなかには科学的根拠の乏しいものもありますが、医学・栄養学的根拠に基づいて健康強調表示を許可された食品もあります。

「特定保健用食品(トクホ)」として許可された食品は、2017年12月時点で、1,000件を超えていて、歯科領域に含まれるものも約100品目存在しますが、その大部分ぱ歯の健康”に関するものです。

“歯ぐきの健康”に関するものとしては、「歯を支えるハグキの健康を保つ」食品として「カルシウムと大豆イソフラボンアグリコン」を含むタブレットが、「歯垢の生成を抑え、歯ぐきの健康を保つ」食品として「ユーカリ抽出物(マクロカルパールC)」配合のチューインガムが承認されているのみです。しかも前者は、対象が更年期を過ぎた女性に限定されています。

また、2015年4月から企業の責任で機能表示ができる「機能性表示食品」制度が施行されました。20巧年度には300件を超える食品が届け出られていますが、現在、歯科領域に含まれるものは、「歯ぐきを丈夫で健康に保つ」食品としてロイテリ菌(L.reuteri DSM口17838株)を含むヨーグルトやサプリメントが届け出られているのみです。

近年では、ビタミン類、脂肪酸、プロバイオティクス、抗菌性食品などを用いた、歯周組織の健康の保持や増進を目的とした機能性食品に関する介入研究が活発に行われるようになってきています。これらの科学的な根拠が示された保健用機能食品は、うまく取り入れれば、セルフケアの一方法として応用できるでしょう。

キシリトールガムの種類の違いは?

キシリトール入りのガムには多くの種類がありますが、市販品や歯科専売品ではどのような違いがあるのでしょうか?

歯科専売品は市販品と比べて、う蝕予防効果の向上が期待されます。

チューインガム(ガム)は、主に味と爽快感を楽しむための嗜好品として消費されていましたが、国民の健康意識の高まりを受けて1990年頃から、砂糖に代わり代用甘味料が添加された製品が数多く販売されるようになりました。

ガムに添加される代用甘味料としては、キシリトール、ソルビトール、アスパルテームなどがありますが、これらの甘味料はプラーク中の細菌による発酵性が低く、う蝕の原因となる有機酸がほとんど産生されません。さらに、ガムを噛むことで唾液の分泌が促進することから、代用甘味料を含むガムの常用によってう蝕が予防されると考えられており、実際にその効果を確認した多くの疫学研究があります。

代用甘味料にはそれぞれ甘さに違いがあります。多くのガムでは、複数の代用甘味料がさまざまな割合で配合されていますが、その理由の一つは、人々の嗜好に合う甘さにするためと思われます。

また、最近では、代用甘味料だけでなくエナメル質の再石灰化を促進させる物質として、リン酸化オリゴ糖カルシウム(POS-Ca)カゼインホスホペプチド(CPP-ACP)を加えたガムも市販されています。歯科専売品のガムには、これらの成分やキシリトールの配合割合を高めたものやフツ化物を加えたものがあり、う蝕予防効果の向上が期待されています。